043.砂漠

蔵馬に出会うまでの私は、砂漠のように乾いていた。
それに疑問を抱く事もなく―――と言うより、乾いていると自覚せず過ごす日々。
潤っている、あるいは充実していると思う今だからこそ、かつての日々が「乾いている」と感じるのだ。




眼前に広がる光景は、かつての自分のようだと思った。
どこまで続くとも知れない、乾いた世界。
しゃがみこんで手の平に掬った砂は、サラサラとまとまる事無く滑り落ち、あるいは風に乗って飛んだ。
水分を一切含まない砂は、どこまでもどこまでも飛んでいく。

「何を笑ってるんだ?」
「昔の私みたいだと思って」
「…あぁ、わからなくはないな」

ざっと砂を蹴った蔵馬がそう答えた。
照りつける日差しなど、まるで感じていないように平然としている。
かく言う私も、似たような様子だろうけれど。

「今はどうなんだ?」
「あなたがいて、あの子がいて…他人と関わる事も悪くないと、そう思っているわ」
「そうか」

私の答えに満足したのか、蔵馬は小さく微笑んだ。
そして、私に向かって手を差し出す。

「行くぞ。ここを抜けなければ目的地には着かないからな」
「ええ、そうね」

彼の手に自分のそれを重ねて、指先を絡める。
きっと、数年数十年…いや、もっと長い年月を、こうして彼と生きて行くのだろう。
蔵馬と言う妖狐がいる限り、私の心が枯れることはない。

【 043.砂漠 】  妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い

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10.05.24