042.灯台

ふと目についたポスターに書かれた単語。
思わず、隣の筧を見た。
その視線に気付いたのか、彼が「どうした?」と問いかけてくる。
夏のような暑さの中も元気なエリーが、彼の持つリードをぐいぐいと引っ張る。
もしかすると、少し困った私を助けてくれたのだろうか。
そんな事を考えながら、エリー、と彼女を諌める。
普段はとても良い子なのだが、散歩中だけはとてもやんちゃ。
大型犬であるにも関わらず、あっさりと彼女のリードを止めてしまえる彼の腕力は称賛に値すると思う。
アメフトって恐ろしいスポーツだ。

「で?」
「ん?」
「さっきの視線の意味は?」

誤魔化したかったわけじゃないけれど、流されていなかったらしい。
苦笑してから、先程通り過ぎた市民会館前の掲示板を指差す。
この位置からでは、その内容は読みとれないだろう。

「今度、灯台の近くでお祭りがあるんだって」
「へぇ…行きたい?」
「え?その日は部活でしょ」
「さっき見てきたのはそう言う事なんじゃないのか?」
「あぁ、違うの」

行ってみたいと思わなかったと言えば嘘になる。
けれど、部活を頑張っている彼を無理に連れて行こうとは思わないし、行こうと思えば友達を誘っていく事だってできる。
私が彼を見上げたのは、別の理由だ。

「じゃあ、何?」
「………灯台から、連想しただけ」
「連想…?」

首を傾げる彼。
そりゃそうだろう、と思う。
少なくとも、彼がきょろと周囲を見回したのは間違いだ。
灯台から連想するようなものは、この近辺にはない。
私が灯台から連想したのは、彼には見えないのだから。

「気にしないで。それより、ランニングしなくていいの?」
「あぁ…大丈夫。エリーを止めてるだけで腕の強化になるから」
「それは…何て言うか、ごめんね?変わろうか?」
「いいって」

そう言って笑ってくれる彼は、今度こそ例の話題を忘れてくれたようだ。
そんな彼を気付かれないように見上げ、クスリと笑う。
灯台に彼のチームメイトを連想したと言えば…どんな反応をするんだろう。

少し気になったけれど、真相は闇の中。

【 042.灯台 】  筧 駿 / トルコ桔梗

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10.05.21