040.凶刃
すらりと、正宗を鞘から抜く。
セフィロスの刀。
白銀の刀身に自分自身が映り、その姿にセフィロスが重なる。
どこまで行っても消えない。
離れる事のない影のように、常に自分の隣にある存在。
違う世界にでも行かない限り、セフィロスの影から逃げる事はできないような気がした。
ふと、刀の中ほどに拭い忘れた赤がある事に気付く。
それが何なのかを自覚すると同時に、この刀を突き立てられて絶命していた男の光景を思い出した。
正宗と言う凶刃に倒れたプレシデント。
どんな人間であったかなど、彼には興味がない。
ただ…セフィロスの手によって一つの命が奪われていたという事。
それだけが、彼の胸に鉛を飲み込んだような後味の悪さを残した。
「…馬鹿馬鹿しい」
今更、だ。
これは、既に母の血を吸った忌々しい刀なのだ。
自分にとってそれ以上の事などない。
これからも、この刀はセフィロスの元で多くの人の血を吸っていくのだろうか。
それを考えると、長い刀身を真っ二つに叩き折ってしまいたくなる。
もちろん、その程度でセフィロスをとめられるとは思っていない。
現にセフィロスはこの刀を手放してどこかへと消えたのだ。
セフィロスの中で、正宗は既に用無しとなっている可能性は高い。
「何で俺…こんなのわざわざ持ち出してんだろ…」
この刀を持ち出したのは、無意識だった。
気付いた時には既に手の中にあったと言っても過言ではない。
セフィロス自身を思い出させるような、美しい刀。
凶刃の持つ不思議な魅力が、手放す事を許さないのかもしれない。
彼は、その刀を月に翳してじっと見つめ、やがてそれを鞘に納めた。
【 040.凶刃 】 男主人公 / Crimson memory