035.喪失

「綱吉―――」

開いたままのドアから顔を覗かせ、綱吉の名を呼ぶ。
主のいない部屋はがらんとしていて、漸く思い出した。

「そっか。修学旅行だっけ」

朝っぱらから子供たち(主にランボ)に盛大に見送られていた。
まるで今生の別れのように大泣きするランボに、困り果てる綱吉。
何とかお母さんが宥めてランボを泣き止ませると、綱吉はとても安心した様子だった。
何だかんだと手のかかる子だけれど、決して嫌ってはいないみたい。
優しい子に育ってくれていて、嬉しいと思う。

―――行って来ます。

ちゃんと目を合わせてそう言った綱吉は、少しだけ寂しそうな表情をしているように見えた。
行ってらっしゃいと答えた私の声を聞いてから、綱吉は学校に向けて歩き出した。



綱吉本人のいない部屋に入る。
いつもは綱吉の部屋に入り浸っているランボも、寂しいのかずっとリビングでお母さんと一緒。
夕日の差し込む窓辺に立ち、夜に向けてカーテンを引く。
無人の室内には、当たり前の事だけれど生活感が残っている。
けれど、そこに本人がいない。
言葉で言い表せない喪失感を覚えた。

「…3泊4日の修学旅行程度で…馬鹿みたいね」

遥かに長い年月を離れていたのに。
再会してからはずっと一緒だった所為で、綱吉が傍にいることが当たり前になっていたのかもしれない。
そんな自分に苦笑を浮かべてから、そっと綱吉の部屋のドアを閉じた。





「楽しんでるか?」
『うん、まぁね。もしかするとお前がついてくるんじゃないかって心配してたけど』
「旅行先ではママンの飯が食えねーからな」
『はは。そっか』
「…そっちは賑やかだな」
『皆興奮しちゃって大変だよ。女子の部屋に行くとか行かないとか』
「ツナも行くのか?」
『行っても仕方ないって。獄寺くんや山本たちも行かないみたいだし』
「そーか。…一つ、いい事を教えてやる」
『ん?』
「寂しがってるぞ」
『誰が――――…姉さん、が?』
「昔の呼び方に戻ってるぞ」
『う、うるさいな!それより、リボーン!それ本当!?』
「さぁな」
『うわ…電話しよう!じゃあ、切るからな!おやすみ!!』
「………切りやがった。こう言うところは相変わらずダメツナだな」

【 035.喪失 】  沢田 綱吉 / 空色トパーズ

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10.05.12