033.螺旋

世界が違うとはいえ、この時代もまた、私達とは違う『現代』へと流れて行くのだろう。
未来の人が今を生きる人の事を知り、子供たちがそれを学ぶ。
そうして学んだ子たちもまた、未来へと繋がっていく。
世界は螺旋のようにくるりくるりと廻りながら流れて行くのだ。

「ねぇ、ここにタイムカプセルを埋めようか」

親友がそんな事を言い出した。
理由を問うと、彼女は笑顔で…けれど、どこか寂しげに答える。

「もしかして私たちの時代に帰らなくちゃいけなくなった時…この時が、夢じゃなかったんだって。そう思える証拠が欲しい」

彼女は大空を仰いでそう言った。
確かに…もし、現代に戻ってしまえば、今この時が夢だったのだと思ってしまうかもしれない。
そうでも思わなければ、息もできないほど愛した人のいない世界を生きていけないだろうから。

「…そうね」
「よし!そうと決まれば…タイムカプセルの内容よね。何にする?」

手紙とか?と首を傾げた彼女に、私はそっと首を振った。

「もし万が一、私たち以外の誰かが掘り起こしても害のないものにすべきでしょうね」
「んー…」
「掘り起こす予定はないんでしょう?」
「…そうね。未来の自分に宛てた手紙は無駄になるかもしれないし。じゃあ、何にしようか」
「…私は…これを」

そう言って、使い込んだ脇差を取り出す。
既に新しいものを用意しているから、この脇差を使う事はない。
破棄しなければと思っていたものだから…再び役目を与えられるのならば、それ以上の事はなかった。

「じゃあ、私はこれ」

彼女が取り出したのは折れた簪。

「元親がくれたものなんだけど…この間折れちゃったのよね。また新しいのを貰ったし…折角だから、最後に意味のある供養をしてあげるわ」
「供養って…」

どうなの、その表現は。
苦笑を浮かべるけれど、彼女はあははと笑って誤魔化してしまう。

「入れ物はどうしようか。普通の箱じゃ駄目だから…これならどう?」

彼女が指差した箱は、鉄のようなもので出来ている薄い箱。
これならば、土の中で分解される事もないだろう。

「じゃあ、それにしよう」
「埋める場所はあの桜の下!」

ほら、と手を引かれて彼女が言う桜の下へと辿り着く。
深く地面を掘り、脇差と簪を入れた箱を底に置いた。
そして、二人で顔を見合わせる。

願わくは、このタイムカプセルを開く事がないように。
大きな桜の木の下で、二人は未来に託す今に土を被せた。

ぐるり、ぐるり―――時代が、廻る。

【 033.螺旋 】  伊達 政宗 / 廻れ、

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10.05.10