030.崩壊
「ここはもう駄目ね」
寂れた炭鉱の中で、彼女はそう呟いた。
放置されて数十年。
こうして歩く振動ですら、天井がパラパラと崩れ落ちてくる。
崩壊の時は近い。
「本当にマテリアがあるのかしら」
「さぁな。可能性はゼロじゃない」
「それはそうだけど」
ガラッと少し大きめの岩が頭上に降ってくる。
迷いなく抜いた剣でそれを弾き飛ばした。
それが新たなきっかけとなり、どこか遠くから崩れるような音が聞こえてくる。
「…奥まで入って大丈夫だと思う?」
炭鉱とは、トンネルのように蟻の巣状に鉱山を掘って作られるものだ。
故に、外に出るルートは限られている。
いくら神羅の2トップとは言え、モグラのようなスキルを持ち合わせているわけではない。
「崩れる前に回収しろ、と言う事だろうな」
「…無茶を言ってくれるわ」
電気は既に止まっていて、頼りになるのは会社支給品のライトのみ。
ファイアを使えば明かりを得る事は出来るけれど、限られた酸素を使うなど馬鹿のすることだ。
急ぐでもなく足を進めていた二人が三叉路に差し掛かる。
「…こっちは行き止まりね」
右の道を見ていた彼女が呟けば、頷いたセフィロスが左の道へと歩き出す。
「崩れたらどうしようか?」
「逃げるだけだ。時間があるかどうかだな」
「ま、そりゃそうよね」
軽く言葉を交わす二人の耳に、ガラガラ、と言う小さな音が近付いてきた。
思わず顔を見合わせる二人。
目で確認できる位置に異変を見ると、彼らはどちらともなく来た道を振り向き、走り出す。
「言った傍から!!」
「騒いでいる間に走れ」
「全力疾走してるわよ!」
「…ん?」
不意に、セフィロスがその足を止める。
セフィロス!?と声を上げた彼女もまた、立ち止まった。
「行き止まりに何かある」
「…例のマテリア?」
「…かもしれんな―――どの位だ?」
前触れも何もなく、彼がそれを尋ねる。
彼女はその内容を悟り、眉を顰めた。
「炭鉱殆どなんだから…1分以上はもたないわよ」
「十分だ」
頷いたセフィロスが行き止まりへと足を進める。
彼女は三叉路にとどまり、迫り来る崩壊音に向き直った。
全身の魔力を高め、視覚で確認できるそれを見つめる。
「“ストップ”」
その声により、世界が時を止める。
「信じられないわ…あの中でマテリアを回収しようだなんて」
「任務だからな」
「魔法がもたなければ生き埋めよ?」
「俺はお前の魔力の高さを知っている」
信じていたさ、と小さく笑う彼。
それを見せられてしまえば、もう何も言えない。
文句を飲み込んだ彼女は、苦笑を浮かべて空を見上げた。
自分たちを迎えに来たヘリが、青い空の中を飛んでいるのが見える。
【 030.崩壊 】 セフィロス / Azure memory