021.傷跡
ポタポタと地面が赤を吸う。
暴発した霊圧が皮膚を裂き、血を溢れさせたのだ。
初めてというわけではないそれに、ひっそりと溜め息を吐き出す。
またか、という自嘲。
「派手にやったね」
背中から声が聞こえた。
先ほどまでその場に気配はなかったところを見ると、瞬歩でやってきたのだろう。
「綺麗な肌に傷をつけてはいけない」
「もう遅いけれど…?」
「そうだね。じゃあ、傷一つ残さずに治してもらうように」
そう言った彼が傷のある手を握る。
自然とその手に血がついてしまい、彼女が眉を顰めた。
痛みの所為ではなく、彼の手を汚してしまった事に対する反応だ。
「君は自分に無頓着だね」
止血をして手ぬぐいを巻く彼の行動を見守っていると、彼が彼女に向かってそう言った。
そんな事を言われたのは初めてで、思わず顔を上げて彼を見つめてしまう。
彼の目の前に限らず、こんな風に怪我をしたのは久し振りなのだ。
「怪我をしていなくても、人を庇う事が多いと聞くよ」
「…よく聞こえる耳を持っているのね」
「噂はどこでも聞こえてくるものだ」
藍染は彼女の頬についた血を指先で拭いながら小さく笑う。
「傷つかないでくれ、と言えば…聞いてくれるかい?」
「…あなたがそれを望むなら」
「じゃあ、あえて言おうか。自分を省みず傷つくのはやめるんだ。私は、君が傷つくところを見たくはないよ。庇う必要もない」
「それでは任務に支障が出るわ」
「その程度の奴は捨て置けばいい―――と言いたい所だが、君にそれが出来る筈がないからね。仕方ないから、怪我をしないと言う前提ならば許可しよう」
随分と上から目線の言い分だと思う。
しかし、自然と頷いてしまうような強い力を持った言葉。
彼女は彼の持つ不思議なカリスマ性に苦笑しつつ、小さく一度、頷いた。
「とりあえず、この傷を治してもらおうか。卯ノ花隊長に頼んでおくよ」
「はい、藍染隊長」
「いい返事だね」
【 021.傷跡 】 藍染 惣右介 / 逃げ水