019.玉石
「何作ってるんだ?」
「んー?ブレスレット」
ベッドにうつ伏せの状態で手元に材料を広げている私を見て、兄さんがそう尋ねてくる。
視線も向けずに答えた私に近付いてきた兄さんは、脇から手を伸ばしてパーツの一つを拾い上げた。
「何でまたこんなもんを作ってるんだ?好きだったか?」
「別に好きじゃないんだけど…学校で壊れてるのを直してあげたら、手先が器用そうだからって頼まれたの」
それなりに仲の良い友人からの頼みを引き受けただけだ。
セット販売されている物だから、説明書通りに作っていくだけの単純な作業だと言うのに、上手くいかずに何度も失敗しているらしい。
「自分用か?」
「彼氏にあげるんだって」
「…手作りを人にしてもらうわけか」
「そう言うのはちゃんと言う子だから、自分の手柄にはしないと思うよ」
たぶんだけど、と言いながら玉石を紐に通す。
通して編んで、交差して締めて。
確かに作業自体は単純だけど、手先が器用じゃなかったら難しいかもしれない。
そんな事を考えながら、先程の玉よりは小さいそれを紐に通す。
「兄さん、どうしたの?」
「あぁ…忘れてた。下に翼が来てるぞ」
「あ、そうなの?上がってくれてもいいよ」
「わかった。そう伝えとくよ」
そうして兄が去り、程なくして翼が部屋に入ってくる。
「何作ってるの?」
「…翼、兄さんと同じセリフよ、それ」
ぷっと吹き出してしまうと、翼が肩を竦めるのを気配で感じた。
「ブレスレット。友達に頼まれたの」
「ふぅん…器用だからね」
「初めてなんだけど、結構面白いね、これ。こういうセットの奴じゃなくて、自分で色々と考えながら作ったら楽しそう」
新しい趣味の一つになりそうだな、なんて考えながら、最後の仕上げを進めていく。
玉も余らなかったし、見本通りの仕上がりになっているから―――うん、成功。
「自分用に材料を買って作ってみようかな…でもブレスレットってあまり使わないのよねー…。翼、作ってあげようか?」
「ミサンガなら付けるけど、流石にそういうのは無理」
「…よね。邪魔になりそうだし」
「玲なら付けるんじゃない?」
「あ、そっか。姉さんなら付けてくれそう。よし!そうと決まれば材料を買いに行かないとね」
姉さんにはどんなものが似合うかな。
考える時間は楽しくて、思わず笑顔が浮かんでくる。
「じゃあ、駅前のデパートに行く?俺も買いたい物があるし」
「うん!」
【 019.玉石 】 椎名 翼 / 夢追いのガーネット