016.夜風
からり、とベランダの窓を開け、涼しい夜の世界に身を滑らせる。
マンションのベランダから見上げる空は美しいものではない。
人工物により汚染された空気により、自然の中のように美しい夜空を見ることは出来ない。
仕事の忙しさの利便性を考え、このマンションを使う事もある。
けれど、やはりあの美しい星空が懐かしく思う。
「身体が冷えるぞ」
背中からぬくもりに包まれた。
彼女は驚く事もなくそれを受け入れる。
「起こした?」
「いや…」
同じようにベランダに出たセフィロスが、彼女を背中から抱きしめていた。
その広い胸に背中を預けるようにして、彼女はそっと瞼を伏せる。
「…ここは空気が悪い」
「そうね。やっぱり…家が良いなぁ」
山奥と言うほどではないけれど、自然が多い場所にひっそりと用意した二人の家。
チョコボを飼おうが家庭菜園をしようが、誰も文句など言って来ない。
元は神羅が有していた土地の一つで、いつだったか神羅から与えられたものだ。
その土地は広く、家一つを建てた所で、大した消費にはならなかった。
「明日の任務は早いわよ」
「そうだったか?」
「相変わらず時間を覚えたりはしないのね」
そう言って苦笑しながらも時間を伝える。
そうか、と淡白な反応を見せることも予想していた通りだ。
「寝ましょう?寝不足で動けないという事はないけど、ありがたくないわ」
「あぁ。…眠れそうか?」
「そうね…あなたが抱きしめてくれるなら、眠れる気がするわ」
「それだといつもと変わらないな」
小さく笑ったセフィロスに、そうね、と頷く。
けれどそれ以上何も言わず、二人はそっと身を寄せ合い、夜風から逃げるように部屋の中に入っていった。
【 016.夜風 】 セフィロス / Azure memory