015.夕闇

「シャンクス?」

次の島について尋ねたくて、彼を探していた。
甲板で見つけた彼は、じっと水平線を見つめている。
その背中が何か物思いに耽っているように見え、口を噤む。
しかし、既にその名を呼んでしまった声まで飲み込むことは出来なかった。
私の声に気付いたシャンクスが赤い髪を揺らして振り向く。

「どうした?」
「…ごめんなさい、邪魔をした?」
「いや…夜になるなぁと思ってただけだ。気にするな」

そう言って、全く気にした様子なく笑う彼。
私は、彼が何を考えていたのかを知る術を持っていない。
二回り近く年齢が離れている彼に比べて、私はあまりに幼いのだ。
その背中に追いつこうと背伸びをして頑張ってきても、近付くことすら出来ない気がする。
笑ってくれる彼の笑顔が遠かった。

「…どうした?」

何となく私の心が落ち込んだ事を悟ったのか、シャンクスがそう問いかけてくれる。
私は笑って首を振った。

「何でもないの。シャンクスは夜が好き?」
「ん?あぁ…嫌いじゃねぇな。思い切り飲み明かす夜は格別だ」
「それっていつもと同じ。昼も夜も関係ないでしょ」
「はは!ま、そりゃそうだな。お前は夜が好きか?」
「…星が綺麗だから好き。でも、夕暮れの方が好きよ。夕暮れはシャンクスの色だから」

もうすでに沈んでしまった夕陽を探すように、水平線へと視線を向ける。

「じゃあ、夜はお前の色だな」

武骨で男らしい手が伸び、私の髪に触れる。
彼が綺麗だと褒めてくれるこの髪は、小さい頃から私の自慢だった。
背伸びと一緒に伸ばし始め、既に背中の半分を覆う長さになっている。
滅多に絡まることのない髪がシャンクスの指の間を滑り落ちた。

「さて、と…本格的に夜が来る前に海の様子を聞いとくか」

そう言って身体を伸ばしながら歩き出した彼は、数歩進んだ所で私を振り向いた。
来いよ、と招く手。
迷いなく彼の隣に並び、共に甲板を歩く。

もう、夜は怖くはなかった。

【 015.夕闇 】  シャンクス / Black Cat

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10.04.09