013.道標
「次はどこに行こうか?」
宛てのない旅に出て、数ヶ月。
思うままに歩く先には道標などない。
右だと思えば右に行き、山があれば登ってみた日々。
楽ではない道のりもあったけれど、不思議と充実した日々だった。
「うーん…」
「地図だと、この先には湖があるね」
「あ、湖は見ておきたいわ」
久し振りに地図を広げた彼の言葉に即答すると、彼はわかっていたとばかりに微笑んだ。
「そう言うと思ったよ。この湖は朝靄が綺麗なんだって」
「へぇ…いつの間にそんな情報を仕入れたの?」
「前の宿でね」
そう言って得意げな表情を見せた彼。
相変わらず、抜け目のない人だ。
「グレミオが戻ってきたら出発しよう。湖の近くで宿を開いている夫婦がいるらしいよ」
「宿があるなら安心して朝を待つことができるわね」
「そうだね。夜の風景も幻想的らしいから、一緒に見に行こうか」
「ええ、是非」
近くに川があるからと水を汲みに行ってくれたグレミオも、もうすぐ戻ってくるだろう。
戻ってきた彼に少し休憩してもらったら、湖に向けて出発だ。
「目的地のある旅路は久し振りだわ」
「たまには道標に従うのも悪くないよ」
「そうね」
「地図を見た感じではそんなに遠くないからね。のんびり行こうか」
そうして、三人の旅は続く。
【 013.道標 】 1主 / 水面にたゆたう波紋