012.聖域
「守りたいんだ」
戯れる彼らを見て、綱吉がそう呟いた。
彼らと知り合い、既に10年の月日が流れている。
知り合いが友達になり、仲間になった。
そんな日々の中、綱吉は少しずつ成長を重ね、今に至っている。
「えぇ、そうね」
「守りたい。だから…ごめん」
綱吉は私に向かって謝罪の言葉を口にした。
これから彼の身に起こる事、それに対する言葉なのだろう。
私は黙って首を振る。
「綱吉の思うようにすればいいわ」
「…紅…」
「私は…待っているから」
今ここにいる綱吉が消え、そして10年前の綱吉がここに来る。
まだまだ純粋で心根の優しいあの頃の綱吉を巻き込むことは心苦しい。
けれど、彼らの事を守りたいと思う綱吉の気持ちは、誰よりもよくわかる。
だからこそ…止めはしない。
笑顔で彼を送り出すと決めたのだ。
「“今”を白蘭の好きにさせるわけにはいかない―――そうでしょう?」
「あぁ。だからこそ計画した」
綱吉がギュッと拳を握りしめる。
壮大な計画が始まろうとしている。
それに対する不安がないと言えば嘘になるだろう。
一番可能性に溢れていた頃の自分、10年前の綱吉が、今の彼の思うように動くことができるのか。
不安を覚えない筈がない。
私は静かに綱吉の手を握った。
「安心して。あなたは…あの頃よりもずっと強くなった。けれど、あの頃のあなたも、とても強かったわ」
「紅…」
「守りたいものがあるんでしょう?だったら…信じてあげて」
10年前の彼も目の前の彼も、綱吉である事に変わりはない。
本当ならば、どちらの彼にも危険な事をしてほしくはない。
けれど、彼には誰にも穢されたくない、大切なものがある。
それを守るために…黙って彼を見送ろう。
「紅には昔の俺とは、出来れば会ってほしくないな」
「あら、どうして?」
「どんな反応をするのか、手に取るようにわかるから―――自分だってわかってるのに、妬ける」
「昔の私はきっと残念がるわ。10年後のあなたに会えないから」
「うーん…それはそれで傷つくなぁ。昔の俺って振り向かせようとして必死だった頃だし」
「仕方ないわよ。大人の魅力には勝てないものよ。私だって…ね」
「え?」
「いいえ、なんでもないわ」
【 012.聖域 】 沢田 綱吉(+10) / 空色トパーズ