010.軌跡
「そういやさ、今度審査があるんだよな?受けんの?」
「当然でしょ?ソルジャー全員対象だもの」
「面倒なんだよなー、あれ。第一、あんたは受けるまでもないだろ」
「面倒でごめんなさいね。あの制度を作ったのは私とセフィロスなのよ」
火の用意をしていた彼女は、クスクスと笑いながらそう言った。
彼女の言葉に驚いたザックスの腕から薪が零れ落ちる。
「二人が!?何で!?」
「クラス1stの死亡率が高かったから」
こともなげにそう告げると、彼女は落ちた薪を拾って積み上げ、魔法で火をともす。
「でも、クラス1stともなれば任務ランクも上がるんだし、当然なんじゃ…」
「…クラス1stに上がるまでは皆必死で頑張るのに、上がった途端努力をやめてしまう。そんな慢心が、任務中の殉職に繋がっていた。昔は審査なんてしていなかったから、クラス1stから落ちる心配なんて誰もしなかったのよね」
「そう…だったのか…」
「上の連中は駒はいつでも補充できるって聞かなかったんだけどね…」
昔を思い出しているのか、彼女は自嘲めいた笑みを浮かべる。
そして、手の中で遊ばせていた枝を火に放り込んだ。
「油断するなって言葉も、頂点を極めたと思っている人には届かない。送り出した仲間が帰らない…そんなのは日常的だった。一ヶ月クラス1stに残っていた人がどれくらいいると思う?」
「……………」
「人はそんな簡単に死んじゃいけない。油断するような人はクラス1stには必要ない。そのための審査なの」
シリアスな空気を一掃するように、彼女はパンッと手を叩いた。
「ザックス、あなたは来週で一ヶ月だったわね?」
「あ、あぁ」
「これまで一人の単独任務はあった?」
「…いや、なかった、かな」
「それも、私たちが決めた事。慣れていないランクの任務に単身で挑むなんて、命を捨てに行くようなものだから」
「…そっか…俺、何も知らなかったんだな」
裏事情を知って、自分の浅はかさに落ち込んでいるらしいザックス。
彼女は苦笑を浮かべて彼の背中を叩いた。
「普通は知らないの。あなたは…事実を話せば、ちゃんと理解してくれると思ったから話したのよ」
「って事は、理解しない奴もいるって事?」
「そんなのは個人の油断なんだから関係ないって審査体制に文句をつけた人もいたわね」
「えー…誰だよ、そいつ」
「言ってもいいけど、もういないわよ」
「へ?やめたのか?」
「二週目の任務で死んだわ」
自業自得と言えばそれまでだが、何とも残念な結果ではある。
表情に困ったザックスを見て、彼女は気にするなと首を振った。
「あなたが思うよりも、クラス1stで生き残るのは難しいの。昔よりはマシになったけど」
「…うん、俺はこれからも頑張るよ」
「ええ。」
ザックスの方を見てそう言った彼女は、ふと手を上げた。
「ファイア」
炎が帯を成してザックスの脇を通り抜けていく。
彼の後ろの茂みから断末魔が聞こえた。
「道は私たちが作っていく。だからあなたたちは生きる事だけを考えて進んできてほしい」
「…あぁ。でも、いつか二人と同じ位置に行けるように頑張る」
「…期待して待ってるわ」
【 010.軌跡 】 ザックス / Azure memory