090.巡る季節は君と
幼馴染が高校生に加えて死神代行を兼任していますって言われて、はいそうですかって信じられる人って少ないと思う。
けど、私はその数少ない人間だった。
「へぇ、そうなんだ。ダブルワークは大変だけど頑張ってね」
一護ならやれるよ!と他人事のように激励してみる。
秘密を打ち明けてくれた真剣な表情が、今度は驚きに変わった。
それから、呆れへと変化する。
その間も眉間のしわは健在だったけど、それが一護だから気にはならない。
「そうだよな、これがお前だよな」
「うん、これが私なんですよ」
笑う私に、一護も同じように笑った。
秘密はないに越したことはないから、話してくれたのは嬉しいと思う。
前にも言ったように、人間離れした特技があっても、幼馴染だって事は変わらない。
「大事なのは、一護がこれからもここにいるって事だよ」
一護の腕を引っ張って、彼を私の隣に並べてからそう言う。
何をしていようが、どんな秘密を抱えていようが、関係ない。
私にとって重要なのは、これから幾度となく巡る季節を一護と一緒に過ごせるって事だけ。
「…それ…お前にとって大事なことなのか?」
「すごく大事な事だよ?こっちは、絶賛急接近中の井上さんとかに持って行かれないように必死なんだから」
「何で井上が関係してくるんだよ?」
わけがわかんねぇ、と呟く彼に、思わず軽く目を開く。
なんと…この男は、あれだけわかりやすい彼女の心に気付いていないのか。
そう言う男だとは知っていたけれど…この分だと、私の想いにも気付いていない。
「いや、井上さんほどわかりやすくはしてないと思うけど…でも、微塵も気付かれてないのは切ないなぁ」
「…意味わかんねぇよ」
「ううん、気にしないで。一護が好きだから隣は譲れないってだけの話だよ」
「………はぁ!?」
「おー、やっぱり驚くか。そりゃそうだろうね」
顔が真っ赤だよ、と指差してから、彼を置き去りにして歩き出す。
数歩進んだ所で彼が駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「あーっと…俺も…お前の事、好きだ」
「うん、知ってる」
「は!?」
「何年の付き合いだと思ってんの?好きだって自覚はあっても私が一護を好きなのは気付かないんだね」
「お前が親友だって言うからだろ!?」
「チャドはどっちの気持ちも知ってたのに」
「マジかよ!!」
「一心さんも一護の気持ちは知ってると思うよ」
「!!?」
驚きと言うよりはショックを隠せない様子の彼に、ふふ、と笑う。
きっと、彼からは何も報告しないだろうから、私から一心さんに教えてあげようと思う。
夜、それはもう盛大に祝われた一護が、その時になって初めて私と一心さんがメル友だって知った。
もっと早く言え、と言うメールを読む私の表情は、とても穏やかだっただろう。
これからも、どんなに季節が巡ろうとこの関係が続いて行くんだと思うと…とても、優しい気持ちになれた。
【 巡る季節は君と 】 黒崎 一護