080.ずっと捕まえていて欲しい
力の片鱗を見せる度に、彼の目が変わるのを感じていた。
ずっと、大きすぎる力は自分には必要なものだと思っていたし、今もそう思っている。
けれど、彼と出会い、彼がその力を目にする度に執着を強めるのを見て。
僅かながらも、この力に感謝した。
これを失わない限り、私は彼の傍にいられるのだと思ったから。
「君に十一番隊は似合わないね」
二人だけの部屋の中で、彼がそう言って薄く笑う。
十一番隊に所属しているのは、文書処理の能力を高く評価されたからだ。
もちろん、実践の評価も決して低くはない。
こと、鬼道に関しては『護廷十三隊において、鬼道で右に出る者はなし』と言われるほどだ。
鬼道が得意ではない十一番隊の隊員をフォローする意味で、私は十一番隊に配属された。
「粗雑な彼らは思うままに動いてくれるからありがたいが…やはり、君はあそこには似合わないな」
「五番隊に配属された方が良かった?」
「君が傍にいればもっと色々なことが捗ると考えたことはあるよ」
良いも悪いも答えずに、彼はそう言った。
けれど、私は五番隊に配属されなくて良かったと思っている。
もしそうなっていたなら…彼は、私の行動すべてを手に入れたも同然。
求める心が満たされてしまえば、私に対する執着も薄れてしまうかもしれないと思う。
満たされないものがあるからこそ、その執着が日々深まっていく。
「それに、私は“皆に優しい藍染隊長”は好きではないもの」
「優しい私は嫌いかい?」
「その優しさが私に限定されるなら、心地よいと思うわ」
彼の手が頬に添えられ、指先が唇を撫でる。
「ここまで私に執着心を抱かせるものは、君以外にはいないよ。今までも…これからも」
「ええ、そうであることを望むわ」
「君の底の見えない霊圧には、私ですらも寒気を覚えるよ。君がここにいれば、何者も私の進路を塞ぐ事は出来ないだろう」
「謙遜を。私の力なんてなくても、あなた一人で世界を手に入れられるわ」
「もちろん。だが、私は君を求める」
愛ではなく、強大な力に対する執着。
けれど、その中に私に対する心の欠片が存在するならば。
四肢を繋ぐ見えない鎖も甘んじて受け入れよう。
既に、私の心は彼のいない世界を認められなくなってしまっているのだから。
【 ずっと捕まえていて欲しい 】 藍染 惣右介 / 逃げ水