079.素直に言ってはあげないけれど

窓越しに見た雲雀は、機嫌が悪いようだ。
不思議に思って自分の次に長い時間彼と過ごす草壁を捕まえて聞いてみた。
帰ってきた一言。

「…お前の所為だ」

何の事だかさっぱりわからない。





わからなくてもいいから雲雀の機嫌を直せと言われた。
いや、正確に言うと、直してくださいお願いしますと切望されたというべきか。
他の風紀委員にまで頭を下げられてしまっては、私としても動かないわけには行かない。
荒くれ者でも頼むときには頭を下げるという常識くらいは備わっているようだ。

「雲雀ー」

ココン、と形ばかりのノックをして応接室に入る。
うん、機嫌の悪さは最高潮。
低気圧の発生源となっている彼は、私の登場に鋭い眼光を向けた。
だが、それ以上何も言わず、ふいっと視線を下に落とす。
その手元には生徒名簿があって、あぁ誰かに被害が行きそう、と危険な予測を立てる。
その予想は高確率で当たるだろう。

「機嫌が悪いのね、何かあっ―――」

言葉半ばで飛んできたトンファーを受け止める。
随分な力で投げられたようで、受け止めた手の平がジンジンと痺れた。

「さっき」
「さっき?」
「沢田綱吉と群れていたね」

その言葉に記憶の糸を手繰り寄せる。
確かに、さっきと言い表せる時間に綱吉と顔を合わせた。
色々と話をして、何が理由だったかは覚えていないけれど…とにかく、彼が可愛い反応をくれたのだ。
弟がいればこんな感じだろうかとほのぼのしたのを覚えている。
雲雀流に言えば『沢田綱吉と群れていた』状況かもしれないが…それが、何か?
首を傾げる私に、雲雀はフン、と鼻を鳴らした。

「僕には言わないような事も奴には簡単に言うんだね、君は」
「…(何を言ったっけ?)」

とにかく可愛かった事しか覚えていない。
何か…雲雀が気にするような事を言っただろうか。

そんな事を考えていると、雲雀がキィ、と椅子を動かした。
立ち上がった彼が私のすぐ前まで歩いてくる。

「言いなよ、僕にも」
「………そうねぇ…私に勝ったら、言ってもいいかな」

何のことかわからないが、今の私のミッションは彼の機嫌を直す事。
とりあえず誤魔化す方向で話を進めようとした私の視界に彼の手が入り込んだ。
何だろうと思う暇もなく顎を持ち上げられる。
必然的に彼を見上げるようになり、漸く気付いた。

「はぁ」

まったく、と呟いてから、彼を抱きしめるようにしてその背後に腕を出し、トンと首裏を叩く。
がくんと崩れ落ちた身体を上手くソファーへと運び、横たえた。

「誰よ、ブランデー入りのチョコなんて出したのは」

貢物だか何だかわからないが、デスクの上に置かれた無造作にあけられたチョコ入りの箱。
言動がいつも通りじゃなかったのは、ブランデーの所為らしい。
何がともあれ、これでミッションは完了。
草壁にメールを作っている途中、ふと思い出す。

「…あ、もしかしてあれの事かしら」

…そんなわけないか。
そう納得して、メールの続きを打ち込んで、送信した。





「あー、もう。本当に可愛いわね!」
「う、わ!飛びついたら危ないって言うか離れてよ!!」
「ツナの性格は本当に癒されるわー。そう言うところ、好きよ」
「!?」
「あはは。顔、真っ赤よ」

【 素直に言ってはあげないけれど 】  雲雀 恭弥 / 黒揚羽

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10.02.05