078.眠るまで、手を繋いで

夜の見張りのため、毛布に包まって甲板に腰を下ろす二つの影。
メインマストに凭れる影は、本来ならば一つであるべきものだ。
今日は天気が良かったからと思う存分昼寝をしてしまった彼女が、眠れないからと見張り担当のルフィと一緒に並んでいるのである。
夜は冷えるからとサンジが作ってくれたスープを水筒に入れてキッチンから持ち出してきた。
それを紙コップに移し、両手で包み込む。

「昔もこうやって二人で夜の空を見上げたよね」
「んー、そうだったか?」
「二人してホラー映画を見て、眠れなくなってさ」
「…ああ!あの時か!」

きっかけによって思い出したルフィが大きく声を上げる。
その声も夜の静けさに飲み込まれて、船の中で眠る仲間を起こしたりはしない。

幼い子供たちには少しばかり…いや、かなり怖いものだった。
案の定二人で眠れなくなってしまって、一つの部屋の中で肩を並べたものだ。
繋いだ手の体温がとても頼もしかったと思い出す。
彼女はクスリと笑った。

「何だ?」
「ううん。あのときのルフィは頼りになったなーって。…自分も怖がってたのにね」
「俺はよく覚えてねぇなー」
「うん、私も。でも、ルフィが言ってくれた言葉は覚えてるよ」

彼女がそう言うと、ルフィはその内容を問う。
そんな彼に対し、彼女はふふっと笑っただけ。

「流れ星見えないかなー」
「お、いいな、それ!」
「ナミが流星群が近いって話してたけど…一週間先が予定だから、まだちょっと難しいかな」

海の真ん中では、邪魔な光は何もない。
首が痛くなりそうなほど思い切り、満天の星空を見上げる。

「眠くないのか?」
「うん。平気。今日は一日中寝てたから」
「そういやそうだったな。ゾロよりも寝てたぞ」
「うーん…ゾロより、って言われると流石に嫌だなぁ。明日から気をつけないと」
「今起きてたら明日も寝るんじゃないか?」
「………頑張るもん」
「俺は寝るけどなー」
「あ、ずるい!」




結局、彼女が過去のルフィの言葉を彼に教えることはなかった。

―――寝るまでちゃんと繋いでてやるからな!

そう言った彼のほうが先に寝てしまったなんて、きっと不名誉なことだろうから。

【 眠るまで、手を繋いで 】  モンキー・D・ルフィ / Black Cat

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10.01.24