068.あなたを想う

仲間集めに各地を渡り歩いている彼は忙しい。
私には別の用事があり、今回の旅には不参加。
彼と離れて過ごすのは久しぶりの事で、少しだけ不安だった。
そんな私の心情を悟ったのか、出発前の彼はいつもよりも私と過ごす時間を取ってくれていたように思う。
お蔭で紋章も安定していて、特に発作的なものが起こる気配もない。
この分だと、あと二週間は何事もなく平和に暮らせるだろう。

「彼の方は大丈夫かしら」

夜、空を見上げてそんな事を呟く。
解放軍の中でもある程度の地位を与えられている私には個室が宛がわれている。
窓辺に置いた椅子に腰掛け、切り取られた夜空を見つめる。

私の紋章は、ソウルイーターなしには生きていけない。
ソウルイーターによって繋がれている命だからだ。
けれど、レックナート様曰く、私自身の紋章もソウルイーターには大切らしい。
その関係を、彼女はつがいと表現していた。
ソウルイーターは私が傍に居なくても命を落とす事はないけれど、彼の話では機嫌が悪くなるらしい。
紋章の機嫌というのも変な話ではあるけれど。
使ってもいないのに魔力が溢れたり、使った術が予想以上の規模になったり…状況は様々だと聞いた。
私が彼の傍を離れる事を許される期間は、ひと月。
それを超えると徐々に身体に異変が起こり始める。
それに対して、ソウルイーターの機嫌は約二週間辺りから徐々に右下がりの傾向を見せるらしい。
彼が出発して、今日で丁度二週間だ。

「今回は何もなければいいのだけれど」

前の時は、大地に巨大なクレーターを作ったと言っていた。
人的被害がなかったのは不幸中の幸いだろうか。

苦笑を浮かべた私は、ふと紋章がざわめくのを感じた。
あえて表現するならば、それは喜びだ。
もしかして、闇夜に染まる大地を一望した私の目に止まった小さな火。
目を凝らしてみれば、それが旅に出ていた一行である事がわかった。

「良かった…無事ね」

ドクン、と鼓動するように熱を帯びた紋章。
それを撫で、まだ遠い火に視線を向ける。
彼らが城に到着するには、まだ少し時間が掛かる。
寝ているだろうかと思いながらも、彼はきっと部屋にやって来る。
お帰りなさいと笑顔で迎え入れられるように、私はそっと腰を上げた。
まずは、着替えだ。

【 あなたを想う 】  1主 / 水面にたゆたう波紋

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09.12.28