067.恋は人を狂わせる

街の一角で、立てこもり事件が起こった。
それなりに良い値段の品を並べる宝石店へ立てこもった犯人。
人質にされた客の中には神羅にそれなりの出資をしている人も居て、見て見ぬ振りはできない。
不思議なのは、犯人からの要求。
それは―――

「私は今日は休暇なんですけれど」

シーツを下半身にかけたまま、電話口で不機嫌な声を出す女性。
剥き出しの背中がふるりと震えれば、隣のセフィロスがYシャツを彼女の肩に掛けた。
目線でありがとうと礼を告げて、電話に集中する。

「そんなの警備会社に任せればいいじゃないですか。わざわざ私たちを引っ張り出す必要なんて―――」

相手がたたみ掛けようとしているのか、セフィロスの位置にも微妙に声が聞こえてくる。
彼女は迷惑そうに僅かに携帯から耳を離していた。
その電話を彼女の手から抜き取り、自分の耳に当ててみる。

『犯人が君の登場を要求しているんだから仕方ないだろう!』
「ほぉ…その話…詳しく聞かせてもらおうか」
『…!?セ、セフィロス!!何故君が彼女の電話に!?』

まさか、電話の途中で相手が彼に代わっているとは思わなかったようだ。
相手はとても驚いていて、電話の向こうで青褪める様子が手に取るようにわかる。
狼狽しすぎて人語を話していない相手に、セフィロスが彼女を振り向いた。

「なんて?」
「犯人がお前を要求しているらしい。会いたいそうだ」
「あら、人気者ね。OKの返事をしてくれる?」
「会うのか?」
「物好きの顔を見ておこうと思って。それに、あなたも来るでしょう?」

すぐに終わるわ、と告げた彼女は、かけていたシャツに腕を通す。
どうやら、着替えに向かったようだ。
セフィロスはその背中を見送ってから、電話に口を近づける。

「要求を呑むと伝えておけ。向かうのは死神が二人だ」

それだけを伝えて、セフィロスは電話を握り潰す。
ガシャン、とつぶれる音がしてから、ハッと我に返るが…物にケアルは使えない。
彼女は怒るだろうけれど、すぐに笑って次の携帯を手配するだろう。
そんな事を考えていると、彼女が部屋に戻ってきた。

「会いたいからって宝石店に立てこもるなんて…相手も馬鹿ねぇ」
「一般人はソルジャーに会う機会なんてないだろうからな」
「そりゃあ、私たちの指名費は馬鹿高いから一般の人には無理ね。さ、行きましょう―――って、私の携帯が粉々なんだけど」
「あぁ、握り潰した。すまなかったな」
「もう。結構気に入ってたのよ、これ。また新しいのを手配しなくちゃ…あなたの携帯を借りるわよ」

数分後、現場に到着したソルジャー二人は、3秒で犯人グループを制圧した。
捕らえられた犯人は一目彼女を見ることが出来て幸せだったと語ったらしい。

【 恋は人を狂わせる 】  セフィロス / Azure memory

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09.12.27