063.やさしく笑って

うわああん、と泣き声が聞こえた。
その声が弟のものだと知ると、すぐに家を飛び出す少女。
声のする方へと走り、彼を見つけた。

「綱吉!」

少女の登場に、その場に居た泣いているツナ以外の少年らが慌てる。
まるで、自分たちが泣かせてしまったような光景だからだ。
しかし、彼女はすぐさま彼らを責めるような事はしなかった。

「綱吉、どうしたの?」
「っねえさーん!!」

鼻が詰まっている所為でいろんな所に濁点の付いた声だった。
駆け寄ってきたツナを受け止め、一緒に居た少年らに説明を求める視線を投げる。

「ツナが縄跳びに引っかかって転んだんだ」
「僕たちの所為じゃないよ!」

身振り手振りでそう説明してくれた少年らに、ありがとう、とお礼を言う。
そして、自分よりもいくらか小さな彼をひょいと抱き上げた。
小さいといっても、身長の差は20センチほど。
少女の腕力には少しばかり重かったけれど、彼女は微塵も表情には出さなかった。

「遊んでくれてありがとうね。ばいばい」

手を振る事は出来ないから、笑顔で少年らにわかれを告げる。
しっかりと首に抱きついているツナにはその余裕はなさそうだ。
彼を抱きなおして、家への道を歩き出す。


「転んじゃったの?」
「…うん」
「そっか。…痛いね」
「…うん」
「明日…一緒に、練習する?」
「…うん…っ」

頷くしかできないけれど、ツナはしっかりと意思表示をしてくれた。
近所の子供たちには、ドジで何をやっても駄目な子だと思われている。
けれど、彼女にとっては大事な弟だ。

「…ねえさん、あるく」
「そう?大丈夫?」
「ん」

ぐす、と鼻を鳴らしながら、ツナが彼女の腕を降りた。
剥き出しの膝には痛そうな傷があるけれど、頑張ろうと思ったようだ。
手を差し出せば、小さな手が彼女のそれを握り返してくれる。

「今日はシチューだよ」
「ホント…?」
「うん。姉さんも一緒に作ったの。楽しみにしてて」
「うん!ねえさんのごはんすきー」
「ご飯だけ?」
「ち、ちがうよ!ねえさんもだいすき!」
「ふふ。ありがとう。私も、綱吉のこと大好きだよ」

漸く見えた笑顔はとてもやさしくてあたたかくて―――まるで太陽みたいだった。

「明日晴れるといいねー」
「ねー」

【 やさしく笑って 】  沢田 綱吉 / 空色トパーズ

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

09.11.14