060.夜の名残を探して

「―――だから、ここを教えておかないと…」
「でも、そこまで教えるとかえって混乱するわ。それなら―――」
「…うん。それも一つの方法ではあるけど、それだとこっちが…」
「―――あぁ、そうね。その問題もあったのね。うーん…」






「―――とりあえず、これでいいか…」
「………うん。終わったー!!」

完璧とは言えないけれど、お互いに納得の出来る形で終わる事が出来た。
やったーと両手を放りだす彼女の隣で、翼も脱力した様子でベッドに凭れる。
今日でなければならなかったわけではないけれど、あれだけ白熱してきたものを途中でやめることは出来なかった。
結果としては解決したのだから、何の問題も―――
そんな事を考えた所で、ハッと時計を見た。
時刻は5時。

「5時ィ!?」
「え?」
「え、ちょ…完全徹夜なんだけど…!!」

慌てて立ち上がり、シャッとカーテンを開く。
既に日が昇り始めていて、空が夜の終わりを告げていた。

「うわ…朝だ」

翼の嫌そうな声が、それが現実であると物語っている。
朝…一日の始まり。
一睡もしていないと言うのに、始まってしまう無情な朝の訪れ。

「いっそ夜を追いかけて走りたい…」

今頃になってやってくる強烈な眠気は、一日が始まる事を拒んでいる。
それは翼にも言えることだ。
ふわ、と大きく欠伸をして、窓際で恨めしくカーテンを握りしめる彼女を呼び寄せる。
何と聞く間もなく、彼女と共にベッドに倒れ込んだ。

「翼?」
「今日は自主休校」
「部活だけど…まぁ、いっか。うん。もし来れなかった時は、って色々話してあるし」

悩んだのは一瞬。
大きく欠伸をして、ごそごそと寝易い姿勢を探す。
ふと目についた時計が、間もなく起きる時間だぞと二人を睨みつけていた。
二人にとっての夜は今からなのだと―――悪あがきのように、時計をくるりと壁側に向けてしまう。
ついでに、目覚ましのスイッチもオフ。
これで邪魔をされずに休める…ゆっくりと瞼を閉じた。







「…凄いありさまだな」

そこここと資料が広がっていて、カーテンは中途半端に開いたまま。
そこから差し込む朝日に、やや眩しそうな表情で眠る翼。
起きて来ない二人を起こしに来たのだが…この分だと、徹夜で終わらせたのだろう。
先程寝たばかりと思しき二人に、彼は苦笑した。
隙間を縫うように部屋を横切って、開いたままのカーテンを閉じる。

「おやすみ、二人とも。…良い夢を」

この部屋だけは、まだ夜なのだと言う事にしておいてあげよう。
小さく言葉を残し、彼はそっと、扉を閉めた。

【 夜の名残を探して 】  椎名 翼 / 夢追いのガーネット

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09.11.07