059.秘密の願い事
「母さん、どうかした?」
XANXUSと同じ赤い目に覗き込まれ、はっとわれに返る。
何でもないと首を振ったところで、彼は納得しなかった。
けれど、それ以上の追求を無意味と考えたのか、大人しく引き下がる。
「呼んでるよ」
「誰が?」
わかっていて、あえて聞く。
息子は年に似合わない渋い表情で沈黙。
暫くして、観念したようにその言葉を紡いだ。
「………父さん、が」
「ありがとう」
よく出来ました、と彼の頭を撫でる。
甘やかすなと言われるけれど、褒めて育てるのが一番だと思っているので、やめようとは思わない。
XANXUSが厳しいから、私が甘いくらいで丁度釣り合いが取れるというものだ。
どこに行けばいいのと問うと、執務室と言う短い返答。
ソファーから立ち上がり、隣の執務室へと歩き出した。
彼をそのまま大人にして、もう少し鋭さと言うかワイルドさを追加すれば、XANXUSになる。
よく似ている二人に、クスリと笑ってしまった。
「頭の良い子でしょう?」
デスクに足を乗せるXANXUSにそう問いかける。
先程まで、彼らは二人で仕事をしていたはずだ。
デスクワークも出来るからと、父子のコミュニケーションのために執務室にあの子を放り込んだことが始まり。
数年間、私が教え続けてきた子だ。
きっと、XANXUSの眼鏡にかなう動きは出来ただろう。
その証拠に、XANXUSからの反論はなかった。
「…生意気なガキだ」
それはあなたの血でしょう、と思ったけれど、口にはしない。
XANXUSからすれば、8年ぶりに外に出たと覚えば、いきなり8歳の子供がいたのだ。
受け入れにくいのも無理はない。
こう言うXANXUSを見ていると、考えてしまう。
―――0歳から見ていたら、何か反応が変わるのかしら。
あの子の0歳の姿を見せる事は不可能だから、二人目に期待するしかないのだが。
こればかりは望んだからと言って実現できるものでもないから、どうしようもない。
それでも、見てみたいと思う気持ちも止めようがなかった。
自分の出生を忌み嫌うXANXUSだからこそ、自分の子が育つ姿を見て欲しいと思う。
そして、できるなら…少しでもいいから、自身を愛して欲しい。
そう思うからこそ、ひっそりと心の中だけで願う。
―――今は無理だけれど、いつか…。
いつか、生まれたばかりの我が子を、彼の腕に抱かせてあげたいと、そう思う。
【 秘密の願い事 】 XANXUS / Bloody rose