058.星屑をひとつひとつ数えて
―――眠れない。
ベッドの上で、ごろりと寝返りを打つ。
どうしようか…と悩んだ末に、彼女はそっと身体を起こした。
ありがたくも一人部屋を貰っている彼女は、そっとベランダに出る。
羽織った毛布は彼女の体温によりぬくめられていて、夜風を物ともしなかった。
「あれ?」
そんな声が聞こえ、そちらを向く彼女。
隣の部屋のベランダに、彼の姿が見えた。
「君も眠れないの?」
「ええ」
君も、と言う事は、彼も同じなのだろう。
苦笑を浮かべた二人は、静かに歩み寄った。
ベランダを仕切るそれの間際まで近付く。
「星が綺麗ね」
今気付いたかのように、彼女が呟けば、彼もまた夜空を仰ぐ。
数え切れない満天の星空。
「そうだね。このところ…ゆっくり星を見上げる余裕なんて、なかったから」
「今日は星座も見られるわ」
「星座?あぁ…そっちは、あまり詳しくないんだ」
ごめんね、と眉尻を下げる彼に、クスリと笑う。
知識を語り合うのは楽しいだろうけれど、別に相手がそれを持っていなかったからと言って責めるような性格ではない。
「私も、たしなみ程度よ。こちらの世界でも星の位置は同じなのかしら」
そう呟いてから、星座を探す目印となる星を探す。
どうやら、星の位置はさほど変わらないようだ。
あれがね、と静かに語る彼女。
押し付けるわけではなく、まるで歌のような心地よい音で紡がれる言葉は、すんなりと頭の中に入ってきた。
「子供の頃、凄く調子が良かった日があって…レディと夜空を飛んだ事があるの。飛竜の背中から見上げた夜空は本当に綺麗だった」
懐かしむようにそう言う。
「竜騎士が仲間になったら、乗せてもらう?」
「…そうね。迷惑だろうけれど…落ち着いたら、一度だけ頼んでみようかしら」
クスリと笑った彼女は、星座の説明を再開させた。
淀みなく紡がれる知識を聞きながら、彼女の指先がなぞる星を数える。
時間は、ゆっくりと過ぎていった。
ベッドにいない彼に慌てたグレミオの声が室内に響き渡るのは、翌日の朝の事である。
【 星屑をひとつひとつ数えて 】 1主 / 水面にたゆたう波紋