046.指切り、ひとつ

「へぇ…面白いね。そう言うのがあるんだ」

任務の合間、ソルジャーに憧れて集まってきた子供たちの相手をしていた彼女。
巧みな話術、人当たりの良い空気―――まるで、引力のように子供たちを惹きつけて放さない。
飽きることなくそこに居た子供たちの一人から聞いた、面白い約束方法。
詳しく教えて?と微笑みかけると、我先にとあちらこちらから説明の声が上がる。
それら一つ一つを拾い上げ、流れを知った。





「セフィロス!」

下見に向かっていた彼が帰ってきた。
部屋に入ってきたセフィロスに、彼女は武器の手入れをしていた手を止めて顔を上げる。

「どうだった?」
「問題ない。明日、魔晄炉内を調査して終わりだ」
「そう。ありがとう」

そう言って、手早く銃を組み立ててしまう。
全てのパーツがきちんと組み込まれている事を確認してから、それを枕の下に押し込んだ。
そして、手が空いてからくるりと振り向くと、コートを脱いで装備を外しているセフィロスが見える。

「ねぇ、セフィロス」
「どうした?」
「今日ね、面白い話を聞いたの」

背中を向けていたセフィロスが振り向いた。
こっちに来て、と手招きすると、腕輪を外しながら近付いてきてくれる。

「手袋も外して?」
「…あぁ」

何をするつもりだ、と思ったのだろう。
少しの間をおいて、頷く彼、
黒い手袋が外され、男らしいけれど女性のように白い手が露になる。
彼女はその手を取った。

「この辺りではね、約束事をする時に、こうやって―――」

彼の手を取り、その小指に自身のそれを絡める。

「小指を絡めて、“指切り”って言うのをするんですって。子供の遊びみたいなものだけれど」
「…まじないのようなものか」
「そうね。それが一番近いと思うわ」

何の効力も制限もないけれど、不思議と“約束”が目に見えない何かで繋ぎとめられている気がする。

「それで?」
「うん?」
「お前は何を約束したいんだ?」
「あ…考えていなかったわ。そうね…明日の任務で、怪我をしないように、とか」
「いつのもの事だな」
「擦り傷も駄目よ」
「………まぁ、いいだろう」

彼女の行動には慣れているのか、好きにしろといった風に答える彼。
彼らしいな、と思いながら、子供たちから聞いた言葉を紡ぐ。

「嘘をついたら…どうしようかしら」
「制約があるのか」
「言葉だけのね。じゃあ、嘘をついたら、社長との食事会に参加って事で」
「…またか」
「ええ、また来ていたの―――断れるけれど。怪我をしたら、OKですって答えるわね」

嫌がらせ以外の何者でもない。
にこりと微笑みながら紡がれた約束に、セフィロスは溜め息を吐き出した。
自分には何のメリットもない約束だが…彼女だからこそ、好きにさせている。
離れていく指先を眺めながら、明日の任務は多少気合を入れたほうが良さそうだな、と思った。

【 指切り、ひとつ 】  セフィロス / Azure memory

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09.10.13