040.このときが出来るだけ長く続けばいい

「初恋?」
「そう!今はルフィの事しか頭にないみたいだけど…初恋もルフィなの?」

楽しげなナミの声に、彼女はうーん、と首を捻る。
そんな二人を見て、ロビンがクスリと笑った。

「私も気になるわ」
「でしょう?」
「初恋かぁ…。初恋は…たぶん、ルフィじゃないと思うよ」

思い出すように天井を見上げた彼女はそう答えた。
幼馴染がそのまま恋人になるのは、そう珍しい事ではないかもしれない。
けれど、子供時代と言うのは案外近くは見えていないものなのだ。
やっぱり、と目を輝かせたナミには気付かず、彼女が続ける。

「私の初恋はきっとシャンクスだなぁ…」

ふわり、と舞い込んだ風にリボンが踊る。
赤いリボンの裾を指先に絡め、彼女は懐かしそうに微笑んだ。





海は恐いけれど、シャンクスの船に行くのは好きだ。
窓から見える港を確認して、彼らの船がそこにある事に笑顔を浮かべるのが、毎朝の日課。

「シャンクス!」

トンと高く飛び、船の縁に着地する。
甲板を歩いていた赤髪の彼が声に振り向いた。
自分がここに居る事に気付くと、彼は太陽のように笑うのだ。

「おー!早起きだな!」
「うん!」
「飯は食ったか?」
「まだ」
「じゃあ、食ってけ」
「そのつもりで言ってきた!」

そう言ってぐっと親指を立ててみれば、彼は「ちゃっかりしてんな!」と髪を撫でてくれる。
少し乱暴だけれど、その手が優しい事を知っているから気にならない。

「ルフィはどうした?」
「まだ寝てるー。お寝坊さんだから」
「はは!この時間なら子供は寝てていいと思うけどな。ま、早起きは三文の徳って奴だ」

行くぞ、と食堂へ向かうべく歩き出したシャンクスに続く。
上着を肩に掛け、迷いなく歩く背中は大きい。
少しだけ悩んでから、強めに床板を蹴った。
そして、勢いのままポスン、と彼の背中に抱きついてみる。

「んー?どうした?」
「何でもないの」

そう答えてから、ふと気付く。
こうして抱きついていると、上着越しに彼の匂いが鼻先を掠める。
あたたかくて優しい、大好きな匂いだ。
思わず笑顔を浮かべて、それを隠すように上着に顔を埋める。
何が楽しいのか自分でもわからないけれど、クスクスと笑い声が零れてしまった。

「今日は随分ご機嫌だな」
「うん。ご機嫌なの」
「そりゃ結構。だが、俺は腹が減ったからな。歩かないなら連れて行くぞ」

そう言ったシャンクスが振り向いて、ひょいと自分を抱き上げる。
片腕に抱き上げられれば、目線が彼と同じ高さになった。
猫の時とは少し違う感覚に、また笑い声が零れる。

「暴れると落ちるぞ」
「いやー」
「はいはい。わがままな猫姫だな」

彼らは海賊で、いつかはこの村から居なくなってしまう。
わかっていたからこそ、このときが出来るだけ長く続けばいいと、そう思っていた。

【 このときが出来るだけ長く続けばいい 】  シャンクス / Black Cat

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09.09.27