031.夕焼け空を見上げた日

ディーノがキャバッローネのボスになって、そう経っていない頃。
ふとした時に、彼は些細な采配ミスをした。
人間ならば誰でもあるような本当に小さなものだったし、結果として怪我をした部下は居なかった。
気にするなよ、ボス。
そんな励ましも、落ち込む彼には届かない。
頭の整理が必要なのだろうと、部下たちは一人また一人と、彼に落ち着ける時間を与えるべく部屋を出て行く。
そんな中、最後の二人であるロマーリオが、もう一人の人物を見た。

「お前は行かないのか?」
「―――…」
「…そうか。…ボスを頼んだぞ」

そう言って、彼は彼女の頭を撫で、扉をくぐる。
バタン、とそれが閉ざされる音が、妙に大きく聞こえた。

閉ざされた扉から視線を外して立ち上がり、窓際に座ってぼんやりと外を眺めているディーノの隣に移動して、無言で腰掛ける。

「―――…落ち込んでる?」
「…まぁ、それなりに、な」
「うん。反省するのはいい事よ」

返事があったことに、小さく安堵した。
ふと見た横顔は、いくらか落ち着いているように見える。

「今回の事、助けてくれてありがとな。お前が居なかったら、あいつら怪我してただろうから」
「人間だもの。ミスしたっていいと思う。そう言うのを支えあうための“ファミリー”でしょ?
あなたが私たちを守ってくれると言うなら、私たちだってあなたを守るよ、ボス」

彼に必要なのは、慰めではない。
案じるよりは、信頼を。
想いをこめて笑顔を浮かべれば、ディーノの表情も徐々に和らいだ。

「キレーな夕焼けだな」
「ええ。明日はきっと…いい天気ね」

並んで見上げた空は夕日に焼かれ、美しい赤に染まっている。

「…ねぇ、ディーノ」
「んー?」
「この部屋ってカメラなかったっけ?」
「そっちの引き出しに入ってたと思うぞ。どうすんだ?」
「綺麗だから、写真に収めておこうと思ったんだけど…駄目だわ。太陽の撮り方がわからない」

カメラがあると言う引き出しに向かおうとした彼女が、腰を上げようとしたところでゆるりと首を振った。
普通の花や風景と太陽では、撮影技術が異なる。
その事を思い出した彼女は、少し悔しげに視線を窓の外に戻した。

「しかたねぇな。心の中にでも写しておけって」
「…気障ね」
「…お前な…。そう言うのは、思ってても言わないもんだって。…自分でも思ったけど」
「でも、ディーノの言うとおりにしておくわ。忘れなければいいだけだもの」

【 夕焼け空を見上げた日 】  ディーノ / 黒揚羽

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09.09.15