023.背中越しの温度

夜の砂漠は冷え込む。
マントを口元まで引っ張り上げ、少し離れたところの薪を見つめる。
自分たちはこんな野宿にも慣れているが、今回は新入りが参加していた。
彼らには、薪の見張りを頼んである。
もちろん、見張りなどは建前で、要は彼らが火に近いところにいられるようにと配慮しただけ。
それでも身体を震わせている彼らを眺めてから、そっと空を仰ぐ。
邪魔なものは何もない、砂漠の真ん中だ。
見上げた空には星が溢れていた。

「お、お疲れ様です!」

そんな声が聞こえ、目線を動かす。
新入りの声を受けたのは、周囲を見てくるといってここを離れていたセフィロスだ。
漸く戻ってきたのね、と心中で呟きながら、歩いてくる彼を見つめる。
特にこれと言った反応を返すでもなく火の横を通り抜け、彼女の元までやってきた彼。

「どうだった?」
「周囲にモンスターの巣はなさそうだ」
「そう。じゃあ、ひとまずは落ち着けるわね」

セフィロスはマントの裾をさばいてから、彼女の背中側に座る。
それを見届け、彼女はトン、とその背中に凭れかかった。
気温が寒い所為なのか、布越しでも彼の体温を感じる事ができる。
野宿ではいつの間にか囲まれていると言う事もある。
そのため、テントを使わずに休む時は、いつもこうして背中合わせになっていた。
こうしていれば、お互いの死角となる背中を守りながら、効率よく戦いを進められる。
もちろん、信頼できる相手だからこそその背中を預ける事ができるのだ。

「彼ら、どう思う?」
「弱い」
「…それは、私たちと比べればそうだけど。態度とか、そう言うものよ」
「悪くはないが―――」
「良くもない?」

彼らには聞こえないだろう。
殆ど、背中越しに声を伝えているといっても過言ではないほどの小さな声だ。
セフィロスは言葉を続けた彼女に頷いた。

「ま、同感ね」
「体力面はマイナスだな」
「それも同感。本当ならこんな所で野宿する予定じゃなかったもの」

厳しいわねー、とまさしく他人事のように語る。
新入りの研修のような仕事だから、報告も正しく行わなければならない。
全てをきちんと報告すれば、彼らは降格が決まるだろう。
神羅で生きていくのは厳しいのだ。

「セフィロス」
「ん?」
「星が綺麗」

少し前かがみになっているセフィロスの背中に沿うようにもたれているお蔭で、星がよく見える。
瞳の中に星を映しながらそう告げた彼女の声を聞きながら、セフィロスはマテリアの手入れをする。

「…彼らが眠ったら、仕事を片付けてきましょうか」
「そうだな。この状態で明日を迎えても、足手まといになるだろう」
「その方が早く帰れるものね。これを機に新人研修は他のメンバーに回してほしいわ」

もううんざり、との声に、同感だと告げる。
二人の動向に意識を向ける余裕すらない新入りたちを横目に、二人は肩を竦めた。

「…セフィロス、あったかいわね」
「歩いてきたからだろう」
「そうね。私も歩いてこようかしら」
「抱きしめてやろうか?」
「こっちを見てる余裕がないとは言え、ふざけてる場合じゃないでしょ。仕事なんだから」
「気にするな」
「気にするの。大丈夫よ、この程度は慣れてるから」
「…まぁ、そうだろうな」
「………そう言うのは、帰ってから、ね」

【 背中越しの温度 】  セフィロス / Azure memory

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09.09.01