009.傍にいてくれるあなたが好き

「銀時ってさ。優しいね」

ふと漏らした言葉に、当事者である銀時はきょとんとする。
きょとん、と表現すると、多少なり愛嬌を感じるものだが、彼の表情は間抜け以外の何者でもない。
いっそ、間抜けな表情と表現を改めるべきか、と思ったところで、ごほん、とわざとらしく咳払いをする銀時。

「あー…漸くお前も俺と言う男の偉大さに気付いたんだな」

えらいえらい、と頭を撫でようとする手からするりと逃れ、杯に注いだ酒を呷る。
彼は行き場のなくなった手を不自然に頭の後ろにやり、がりがりと頭を掻いた。

「で?どんな理由でそんな藪から棒な言葉が飛び出してくるんだ?」
「他との比較で」

そう言って視線を向けた先には、先の戦にて勝利を収めた事を喜ぶ面子が酒を呷っている。
収拾が付きそうにないほどに出来上がっている彼らからさりげなく逃げたのは、ばれていないとはいえ自分が女である事を考慮した結果だろう。
それでなくとも、綺麗な顔立ちの彼女は普段から隙あらば、と狙われている。
男所帯というのはそう言うものだ。

「アー…まぁ、酒は人間を駄目にするからな」
「杯も使わずに瓶から酒を飲んでる男の台詞じゃないね、それ」
「そりゃ、お前…それが適用されるのは、酒に弱い連中だけに決まってんだろーが」

自分は関係ないのだと言い張る彼に、なるほどね、と冷めた返事を返す。

「それで…他と比較した上で、俺が優しい、と?」
「そう思うよ」
「…よーし!やる気出てきたー!!!てめーらその勝負俺も混ぜろ!!」

いきなり賑やかになったかと思えば、飲み比べの勝負をしている輪の中へと飛び込んでいく銀時。
どうやら、酔っていないように見えていただけらしい。

彼女が逃げるように男たちの輪を外れて、一番に気付いたのは銀時だった。
彼は彼女を連れ戻そうとするのではなく、黙って彼女の隣にドカッと腰を下ろし、持ってきた酒を呷り続けた。
一人で飲んでいることに気付かれれば、酔っ払いの連中に絡まれるのは必至。
経験があるからこそ、銀時のささやかな配慮に感謝したのだ。

だが、飲み比べをしている彼に、先程の空気はない。
少し褒めればこれだ―――呆れたように、溜め息を吐き出した。

「黙って傍にいてくれる銀時は好きなんだけどなぁ…」

思っていても、口にするのはやめよう、と思う。

【 傍にいてくれるあなたが好き 】  坂田銀時 / 朱の舞姫

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09.08.11