007.守りたい笑顔

例えば明日、世界が滅ぶのだとしても―――英雄と謳われるセフィロスを動かす事は出来ないだろう。
彼は博愛的な人間ではない。
では、彼の人を動かすにはどうすればよいのか?
同僚たちに無理やり背中を押され、ザックスはその調査に乗り出した。

「っつーか、答えなんて決まってんだろーが…」

休憩所を放り出されたザックスは、一人でそう呟いた。
そう、少しでもセフィロスを知る者ならば、答えなど考えるまでもない。
彼は、いつでもその“答え”と共に行動しているからだ。
そして、その“答え”こそ、彼の行動の全てを握っていると言っても過言ではない。

「あ、セフィロス」

廊下の向こうを歩いていく背中を見つける。
彼だけが持つ見事な銀色の長髪が覆う背中は、ゆったりとした足取りで遠ざかっていた。
彼を見つけると同時に、珍しい、と思う。
その隣に居るはずの彼女の姿が見当たらない。

―――これは、チャンスかもしれない。

ザックスはその場から駆け出した。

「セフィロス!」
「…ザックスか」

タタッと駆けてきたザックスに、セフィロスが首だけを振り向かせる。

「珍しいな、セフィロスが一人って」
「あいつなら家だ」
「へぇ…休み?」

素っ気無く、そして無愛想なセフィロスを前に、普通の会話が出来る者は少ない。
その数少ない人物の一人であるザックスは、当然のように会話を進めた。

「何か病気とか?休むのって珍しいよな」
「あいつじゃない。チョコボが風邪を引いた」
「あぁ、例のチョコボ二匹?前に聞いたけど、猫かわいがりしてるんだってな!で、どこに向かってんの?」
「ちょこぼうに薬を貰いに行く」
「セフィロスが?」

やや驚いたようにそう問い返すザックスに、彼は何を当然な事を、と言いたげな視線を返した。

「あいつは心配で二人の傍を離れん。動けるのは俺だけだろう」
「…子供みたいにとは言ってたけど…ほんとに、自分の子供みたいだな」

とても意外だけれど、それもありなのかもしれないと思う。
そう思っているのが彼女だけではない事は、セフィロスの言動からもはっきりと見て取れるのだ。

「じゃあさ、俺も行くよ!でさ、折角だし、チョコボを見せてくれよ!」
「…断られないなら、好きにしろ」
「了解~」

早速彼女にメールを送ろう、とケータイを取り出し、カチカチと操作するザックス。
置いていく勢いで歩くセフィロスに辛うじて付いていきながら、彼女からの許可を受け取った。





「あぁ、お帰りなさい、セフィロス。それと、いらっしゃい、ザックス」
「あぁ。カストルとポルックスはどうした?」

玄関を入ると、丁度廊下を歩いていたらしい彼女と出会う。

「リビングよ。寂しがっているから、会ってあげて」
「わかっている。これが薬だ」
「ありがとう」

会話の合間に微笑む彼女を見て、あぁ、と納得する。

―――セフィロスが動くのは、この笑顔を守りたいからなんだな。

人当たりの良い彼女が、しかし誰にでも見せるわけではないその表情。
セフィロスだけに向けられるそれを守りたいからこそ、いつもの彼には似合わないような行動も気にならないのだろう。
薬を渡してリビングへと歩いていくセフィロスを見ながら、ザックスは胸の辺りがほかほかとあたたかくなるのを感じた。

「何をにやついてるの?」
「別に!気にすんなって。それより、これ土産」
「あら、野菜ね。あの子達が喜ぶわ。ありがとう」

調べて来いと言われたけれど、この結果は誰にも話さない。
彼らの事は、二人だけが知っていれば十分だろうから。

【 守りたい笑顔 】  セフィロス / Azure memory

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09.08.09