082.尽きた
「あーつーいぃー…」
じりじりと照り付ける太陽の下、間延びした声を上げる。
その声には覇気がない。
このままこの場にいれば、熱中症で倒れてしまいそうだ。
まだ6月だというのに、この暑さは何なのか。
誰に言えばいいのかもわからない文句を飲み込んで、ただ暑いという言葉を繰り返す。
「暑いー」
「言うな」
「暑いー…」
「言うなっつってんだろーが!!」
横で暑い暑いと繰り返す成樹の尻を蹴る。
だらけきっていた彼は、蹴られるままに前方へと飛び、程よく熱せられた地面と仲良くなる。
べちゃりと地面に伏して数秒後。
「あっつー!!」
文字通り、飛び起きた。
「何すんねん、自分!!シゲ焼きが出来るやないか!!」
「安心しろ。地面で人間が焼けた例はない」
「最初の例になったらどうすんねん!」
「…温暖化もそこまで進んだか、と思うだけだな。地球の行く末が心配だ」
「温暖化の前にこっちを心配せぇや!!」
「…そんなに叫んでて暑くないか?」
「…暑い…。自分のクールな反応すらこの場の空気を冷やすところまではいかんわ…」
「そりゃ悪かったな」
淡々と答えが、その頬や首筋には汗が光っている。
照り付ける太陽は、万物に分け隔てのない暑さを提供しているのだ。
「ほら、もっとやる気出せよ。終わらねぇじゃん」
「サッカーやったらやる気出すけど…これは無理やろ」
「無理でも何でもやるんだよ。終わらなきゃずっとこのままなんだからな」
そう言って、ブツリと根っこごと草を引き抜く。
「何でこんなくそ暑い日に草引きなんか…」
「仕方ねぇって。グラウンド、使えねぇんだから」
「おまけに、何やこの蒸し暑さは」
「そりゃ、昨日はグラウンドが駄目になるような大雨だったからな」
「白黒ボールが恋しいわ…」
「抱きしめて作業が進むなら止めないぞ」
「………クールすぎる切り返しも暑さには勝てんなぁ…」
「わかってんならやらせんな」
とりあえず、手の代わりに口ばかりを動かしている成樹の頭を、逆被りしている帽子の上からぺしん、と叩いておく。
やる気がないのはこちらも同じだが、二人に割り当てられたノルマがある以上、終わらなければ困るのは自分たちだ。
「………そう言えば、昨日スーパーでアイスの安売りしてたな」
「………………」
「大量に買いすぎたアイスが冷凍庫に詰め込まれてんだよなー…あれ、絶対冷蔵庫によくねぇわ」
「………何が言いたいん、自分?」
「真面目にやれば招待してやらんこともないけど、って話」
返事はなかったけれど、とりあえず手は動き出したので良しとしておこう。
30メートル先に引かれたノルマまでの広さに生えている雑草を見下ろし、はぁ、とため息を吐き出した。
【 尽きた やる気 】 佐藤 成樹 / Soccer Life