077.響く

「あー!!無闇矢鱈に物を破壊するなって言ったでしょーが!!」

紙でも握りつぶすように公共物を破壊する峨王に、お決まりとなった彼女の声が響く。
初めこそ彼女が声を上げる度に、怪我をするのではないかと案じていたのだが、無傷での帰還が続けば見方も変わる。
最早、瀬那たちですら「あぁ、またやってるよ」と言う程度に、少ししか心配しなくなった。

「二流のヒーローアニメの悪役でもあるまいし…破壊の限りを尽くすなんて、人間のすることじゃないわよ」

全く…と呟きつつ、まもりと共に後片付けをする彼女。

「でも…凄いと思うわ」
「何が?」
「峨王くん、言うこと聞いて止めるでしょ?マルコくんが苦労していたみたいだから」
「あー…まぁ、ね。煩いんじゃない?きっと」

ごみをゴミ箱に放り投げ、パンパン、と手をはたきつつそう答える。
そして、納得していない様子に見えるまもりを押して、次の場所へと移動していく。


その様子を見ていた陸が、近付いてくるマルコに気付く。
や、と手を上げた彼は、そのまま陸の隣で立ち止まった。

「…何か?」
「…一つ忠告しておこうと思ってね」

マルコの言葉に、忠告?と鸚鵡返しする陸。
肩を竦めた彼は、二人のマネージャーの方を見ながら、口を開いた。

「峨王は力だけの馬鹿じゃない。その辺、ちゃんと理解しておいた方がいいよ」
「―――――」
「その顔だと、話がわからない、っちゅーことはなさそうだな」

ふっとそらされた視線に、マルコは陸の心中を理解した。
薄々気付いていたのだろう。

「厄介な相手に気に入られたもんだね、彼女も。本人に自覚がないだけマシか」
「…ご忠告どうも」

これ以上何かを聞くつもりはないと言う姿勢をあらわすように、陸はマルコを置いて歩き出す。
こちらに気付いた彼女が手を上げて、陸、と笑った。

「…俺も…譲らないし」
「陸?」
「こっちの話。って言うか、相変わらず危ないことするよな。見てるこっちが冷や冷やする」
「だって…誰も言わないじゃない。それに、言えばわかるみたいよ。最近は一声目でやめるようになってきてるでしょ」

少しは進歩してるじゃない?と笑う彼女。
何となく、もやもやした感情を抱え、口を噤む陸。
そんな彼に気付いた彼女は、不思議そうに首を傾げた。

「何か心配ごと?」
「…や、別に」
「…ふーん…。彼のことを心配してるなら、無意味だと思うけど」
「な!」
「“何で”って?そりゃ、陸を見てればわかるわよ。それに…マルコくんにも、下手に関わらない方がいいって忠告されたし」

彼女にも言っていたのか、と思ってマルコを振り向くも、すでに彼の姿はそこにはない。

「ね、陸。次の試合までに息抜きに行こう?」

手を取って散歩でも、と誘う彼女の意図が見えて、陸は苦笑を浮かべた。
そして、引かれるままに歩き出し、程なくしてその隣に並ぶ。

「…別に、心配はしてないんだ」
「うん」
「ちょっと、気になっただけで」
「いいんじゃない?私は少し嬉しかったから」

そう言って笑った彼女の表情を見ていれば、無意味だといった理由が理解できた。
漸く表情を緩めた彼を見て、彼女もまた、普段の表情を取り戻す。
そうして二人は次の試合までの少しの間、異国の地の思い出を残したのだった。

【 響く 言葉 】  甲斐谷 陸 / 向日葵

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09.05.26