075.些細な

「ロー船長!!」
「キャプテン!!」

1対多数の状況の中に飛び込んできた一匹の黒猫と、クマ。
その二匹だけで状況を打開してしまうのだから、恐ろしい戦闘力だと言えるだろう。
最早自分が手を出す必要はないと考えたローは、刀を肩に担いで傍観姿勢を取った。
ものの10秒で数十人の敵が地面に伏した光景。
最後の一人を一緒に蹴り飛ばすと、二匹はぱんっと手を合わせた。
と言っても、二足歩行のクマと猫。
手を合わせたというよりは、クマの手に猫パンチ、と言ったような感じなのだが。
しかし…このアニマルペアは仲が良い。
動物同士、気が合う所があるのだろう―――二匹の様子に、ローは僅かに口角を持ち上げた。

「猫にクマ…船上の動物園かよ…っ!!」

地面に倒れて腹を押さえていた一人が、苦しげにそう呻いた。
何を言ったとしても、負け犬の遠吠えだ。
そんな男の声を聞き、ベポの肩に乗っていた彼女がぽーんと跳ぶ。
空中でひらりと身体を回転させた彼女は、人型へと戻ってから男の上に着地。
ぐえ、と言う蛙を潰したような声が聞こえた。
男の背中の上でしゃがみ込んだ彼女は、そのままの姿勢で二コリと笑う。

「私は人間。ついでに、動物園に猫はいないんだよ。猫科の動物はいるけどね」

お生憎様!と笑った彼女は、更に男を踏みつけながら地面へと降りる。

「船長ー。終わりましたー」
「そうか。他の奴らはどうした?」
「船の積荷を漁ってる。お前ら二人で十分だろ、って」

二人と言うのは彼女とベポの事だ。
顔を見合わせる二人。

「大丈夫だったね」
「っていうか、この程度なら私たちが手を出す必要もないよね」
「キャプテンは強いもんね」
「ねー」

純粋な性格で油断を誘ったところに強烈な一撃を食らわせるのだから、性質が悪いと思うのは気のせいだろうか。
海賊と言う肩書き上、それが咎められることはないけれど。
本人たちに悪意がない分、敵のショックも大きかろう。
潰されていた男の心中を悟ったように、フッと笑みを零す。

「船長?機嫌良いね」
「まぁな。他の奴らと合流して、さっさと引き上げるぞ」
「アイアイ、キャプテン!」
「アイアイ!」

ベポの真似をして元気に返事をした彼女は、再び黒猫の姿になってベポの元に走ろうとする。
いつものように肩を借りようと思っているのだろう。
そんな彼女の名前を呼べば、即座に足を止めて振り向く。
くりっとした金色の目が、理由を問うようにローを見上げた。

「来い」

そう言って腕を差し出してやれば、パッと表情を輝かせてローの肩を借りる彼女。
爪を立てないように気をつけているらしい黒猫を肩に乗せたまま、前を歩くベポに続いていく。

「…動物園か…。言い得て妙、だな」
「迷惑?」
「だと思うか?」

口角を持ち上げつつそう答えれば、彼女は嬉しそうに笑った。
喉を鳴らしているのは、意図してなのか本能的なのか。

ぐるぐると鳴る音を聞きながら、甲板に伏した男たちを避けつつ自船へと戻っていく。

【 些細な こと 】  ハートの海賊団 / Black Cat

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09.05.24