063.抱きとめた

硝煙の臭いが酷い。
共に連れてきた兵士たちの銃撃によるものだろう。
さほど大きくはないこの町を、神羅は敵と判断し、そしてソルジャーを送り込んだ。
殲滅―――私と、そしてセフィロスに与えられた任務。
不穏因子を排除すると言う神羅の考えはわかる。
大きくなればなるほど敵は多く、小さな傷がやがて大きな亀裂となることもある。
しかし―――ここまでしなければならなかったのだろうか。
レッドベル殲滅の時と同じ状況が、目の前に広がっている。

「―――私、は…」

呟く続きを紡ぐ暇すらない。
敵も黙ってやられていないのだ。
浴びるような銃弾を放たれ、その全てを剣で弾き落した。
息をつく暇もなく、今度は魔法が迫ってくる。
魔法全てを相殺し、それにかぶせる形でファイガを放とうとして…手を下ろす。
向かってくる彼らに、かつての仲間が重なった。

「―――…チッ!」

小さく舌を打ち、走り出す。
目指すは、町を一望する管制塔。
あれを壊せば、彼らは対抗する術を失う。





管制塔は、古びた街には似合わず、ビルの30階に相当するほどの高さがあった。
鉄の階段を3段飛ばしで駆け上がり、上を目指す。
階段が終わると持っていた銃を構え、少し錆びた鉄のドアを回し蹴りでぶち破る。
私の顔を知っていたのか、一人が「伝説のソルジャー!」と悲鳴にも似た声をあげた。

「抵抗しなければ命までは奪わない!」

武器を構えた彼らに向ってそう怒鳴る。
戸惑いを浮かべる彼らの脇を通り、メインボードをダウンさせていく。
これで、神羅の魔晄炉から魔晄を吸い上げていたシステムが止まる。
プラスチックで覆われた最後のボタンを押し、全てが停止したことを確認した。
これで終わり―――ふぅ、と息を吐き出してから、銃を構えてメインボードに十数発の銃弾を撃ち込む。

「…どこか遠くへ逃げなさい。そうすれば、命だけは助かるわ」

壁際で沈黙していた彼らを一瞥し、そう言い残して制御室を出ていく。
階段の所で町を見下ろせば、あちらこちらから火の手が上がっているのが見えた。
もう、この町は終わりだ。

「打倒、神羅!!」
「!」

声が聞こえたかと思えば、ドンと言う衝撃が走る。
足場が消えたと判断すると同時に、身体のバネを使って自分を突き落した男を蹴り飛ばす。
血と共に歯が飛んだのが見えたけれど、この高さから落下するよりはマシだろう。
男が踊り場に引っかかったのを見届ける前に、身体が重力に従った。
鬱陶しいほどに髪が乱れ、耳元で風が鳴る。
普通の人間であれば、この高さは即死だろう。
しかし、私にとってこの程度は高さではない。
くるりと身体を反転させ、足から着地できるように向きを変える。
そこで、着地予定地点に人がいるのが見えた。
銀色の髪と、長すぎる刀を持つ人。
その人を取り巻く、数十人の武器を持った人間。
持っていた銃を構え、迷いなくトリガーを引いた。






雨のような銃弾を逃れるように、数十人の人は四方八方に散る。
お蔭で足元にいるのは彼ただ一人。
あと10秒もすれば地面だ。

「階段が面倒になったのか?」

地上に降り立っていないのに、声が聞こえた。
それと同時に、身体をふわりと抱きとめられる。
驚いて声のした方を見、そして着地する予定だった場所を見る。
私の存在に気づいた彼は、落ちてくるのを待たずに垂直に飛んで私を受け止めに来てくれたらしい。

「…退いてくれればそれでよかったのに」
「気にするな」

二人して重力に従って地面へと降りる。
30階分を落下してきたとは思えないような、静かな着地だ。
トン、と降り立った彼は、惜しむこともなく私を地面に下ろす。

「腕は平気?」
「あぁ。それより、システムはどうなった?」
「止めたし、壊してきたわ」
「そうか。それなら退くぞ」
「え?」
「神羅がミサイルに踏み切った。兵士は既に撤退している。聞いていなかったのか?」
「…そう言えば、ここに上る前に携帯が壊れたのよ。その後だったのね」

御臨終した携帯のなれの果てを取り出し、地面に放り投げる。
気に入っていたのだが、壊れたものは持っていても仕方ない。

「じゃあ、退きましょうか。巻き添えはごめんだわ」
「あぁ。行くぞ」

コートを翻す彼に続いて歩きだし、そっと管制塔を振り向く。
逃げろと言った彼らは、助言に従うのか、それとも町と運命を共にするのか。
そんな事を考え、しかし結論を出さぬままに身体の向きを戻す。
少しだけ足の動きを早め、セフィロスの隣に並んだ。

【 抱きとめた 身体 】  セフィロス / Asure memory

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09.04.19