050.金色の

バリバリと耳を打つヘリの音にも、もう慣れてしまった。
独特の揺れに身を任せつつ、窓ガラスにこつんと側頭部を置く。
その時、何気なく向けた地上に広がる光景に、彼女は一瞬思考を失った。

あれは―――

窓に張り付くようにしてそれを見下ろす彼女。
そんな彼女の様子に気付いたらしく、セフィロスがその翡翠色の目を開く。
眠っていたわけではないけれど、移動時間を賑やかに過ごす種類の人間ではない彼は、ただただ無言で目を閉ざしていたのだ。

「何かあったのか?」
「草原がね。紅葉の季節だから…金色の絨毯を敷いたみたいに、とても綺麗なの」

船よりはいくらか速いとはいえ、景色が一瞬で去ってしまうほどの速度ではない。
ヘリの下には、依然として金色の草原が広がっていた。

「…目を奪われるほどの光景か?」
「んー…まぁ、理由は別にあるんだけど」

返事を濁す彼女に、セフィロスの視線が向けられる。
じっと無言で見つめ続ける彼に、彼女はやれやれと肩を竦めた。

「あの色。何かを思い出さない?」

あえて答えを告げるのではなく、ヒントから答えにつなげていく。
彼女を越えるように上半身を動かし、ガラスに手を付いた彼はそのまま草原を見下ろした。
サワサワと風に揺れる、金色のそれは―――

「…プレシデントの若造、か?」

…痛みは殆どなかったけれど、彼女の拳がセフィロスの脇腹を突く。
どうやら、彼女の望む答えではなかったようだ。

「もう。どうして先に副社長が出てくるのよ」

まったく、と少し肩を怒らせる。
彼女の様子からして、求める答えは彼女にとって大切なものらしい。
そして、セフィロスが連想できるというからには、彼にとっても大切なもの。
彼女自身…ではない。
と言う事は。

「あぁ、カストルとポルックスか」
「その通り。出来るなら最初にあの子達を思い浮かべて欲しかったわ」

ルーファウスのことなど、名前も覚えていないと言うのに…こんな時に、第一に彼を連想するとは。
不満げな表情を隠そうともしない彼女に、確かに、と自身の反省すべき点を省みる。
見れば見るほど、置いてきた二羽のチョコボが浮かんでくるから不思議なものだ。

「―――待っているな」

ぽつりと、ヘリの音に遮られるには十分な音量で呟かれた言葉。
すぐ近くにいた彼女以外は誰一人、その言葉を耳にすることはできなかっただろう。
しかし、彼女には聞こえていた。
驚いたように目を見開き、ぽかんとした表情を見せる彼女。

「…何だ」
「いや…だって…セフィロスが、そんな事言うとは思わなくて…」

驚いているの、と見ればわかることを告げる彼女。
確かに、神羅の中では感情の見えない人間として、尊敬されつつも恐れられている彼だ。
そんな彼が、子煩悩までは行かずとも…残してきたチョコボの事を考えているなど、誰が想像できようか。
照れ隠しなのかはわからないけれど、彼は窓ガラスから手を離し、先程と同じように足を組んですわり、目を閉じてしまった。
いつもと同じ姿勢なのに、その空気が少し柔らかいような気がして、クスクスと忍ぶように笑う声を抑えられない。
間もなく到着します、と言う操縦席の方からの声が聞こえるその時まで、二人の間には穏やかな空気が流れていた。

【 金色の 草原 】  セフィロス / Asure memory

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09.04.01