034.焼き付ける

「リオウ。あいつらの戦い方は参考になるからな、しっかり見とけよ」

かつて、あのトランの英雄と謳われるティル・マクドールと共に戦った同志である、フリックの言葉。
あいつら、と称した目線の先には、ティルだけではなく、コウも居た。
コウは腕に装着する形のボウガンを、ティルは棍を、それぞれが自身の得物を構える。

「コウ。アイツの足を止められる?」
「誰に聞いているの?」
「うん。愚問だけどね、確認確認」
「何時間でも止められるわ」
「頼もしい回答だ。じゃあ、行こうか」

そう言って、打ち合わせとは言えない様な軽いやり取りを終えたティルがリオウたちを振り向く。
そして、彼はニコリと微笑んだ。
こちらの人数以上のモンスターを前にして浮かべる表情ではない。

「ゆっくり休んでいるといいよ。あれは、僕たちで片付けてあげるから」

連戦だったリオウたちを案じたのだろう。
自ら名乗りを上げた彼らは、リオウが止める間もなく、モンスターの中へと歩んでいく。
強い事は知っているけれど、それでも数が違いすぎる。
とめなくていいのか?とフリックを振り向くが、彼は心配など微塵もしていない様子だ。
まだ拭いきれない不安を抱きつつ、リオウは二人の背中を見た。





一つ一つの動作を、完璧に打ち合わせているようだった。
ティルが右へ動けばコウは左へ。
たとえ、背中を向け合っていても、それが重なることはない。
時折、視線を合わせる余裕すら垣間見せながら、彼らは着実に数を減らしていく。
ティルの背後へと放たれた紋章術を、コウの魔法が防ぐ。
彼女が詠唱した隙にその細い背中に向かってきた剣は、流れるように滑り込んだティルの棍によって弾かれ、盛大な反撃を食らう。
最後の一匹が棍の一撃により空を舞い、それを追うようにして放たれた矢が急所を射抜く。
地面に落ちるまでの間に、モンスターは砂のように消えた。

周囲を一瞥した二人が、同時に視線を合わせる。

「怪我は?」
「大丈夫。ティルも…大丈夫そうね」
「お蔭様で、一撃も食らってないよ」

いい腕だね、と褒めるように告げる彼に、コウは嬉しそうに微笑んだ。
そして、言葉もない様子のメンバーの所へと戻ってくる。
息一つ乱していない二人に、経験の差を痛感した。

「相変わらず見事な連携だな」
「まぁね。ずっと一緒だったし」

この程度は朝飯前。
そう答える彼に、漸く我に返ったリオウが駆け寄っていく。

「ティルさん!僕に―――」
「うん。君とも協力技が出来そうな気がするけど…もう少し、要努力、かな」

精進しなよ、と微笑む彼に、リオウは輝くような眼差しを向けた。
ティルのついでに尊敬に染まりきっている熱い視線を受けていたコウは、そっとティルに近付く。

「今でも協力技が使えるでしょう?あなたが合わせてあげれば」
「効果は最大限に活かさないと。どちらかが抑えるんじゃ意味がないよ」

ニコリといい笑顔で答えた彼に、コウは肩を竦めた。
まぁ、このリオウの様子ならば、すぐにティルのお眼鏡に叶うだろう。
並び立つにはまだまだ時間がかかりそうだけれど。

【 焼き付ける 光景 】  2主 / 水面にたゆたう波紋

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09.03.11