024.もう戻れない
暫く…数日間、会えないだけだと思っていた。
二人が別の任務に付く事は珍しかったけれど、それでもゼロではない。
数日離れる程度は割と慣れていると思っていたし、今回もそうなのだと思っていた。
「待っているから」
洗濯したばかりのシーツに包まって、隣に居るセフィロスにそう告げる。
グリーンの目がこちらを向いた。
「多分…私の方が、帰って来るのは早いと思うの」
「…そうか」
「だから…待ってる」
そこに含まれている意味が、早く帰ってね、と言う内容であると気付く。
セフィロスは無言で彼女の肩を引き寄せた。
自分と並ぶクラス1stのソルジャーとは思えないほどに、細い身体。
けれど、その白い肌に残ったいくつかの傷痕を見れば、それも納得できると思った。
肩の辺りに残っている消えない傷痕に唇を触れさせれば、彼女はくすぐったそうに身を捩る。
「…副社長の護衛…と言ったか」
「ええ」
「………長居はするな」
肌の上を掠める彼の吐息に、言葉に出来ない感情が沸く。
彼が言った言葉の意味がすぐには理解できなかったけれど、気付くと笑いを堪えられなかった。
クスクスと笑う彼女を黙らせるように、新たな場所に赤い痕を残す。
「副社長には気に入られているみたいだけど…大丈夫よ。私が愛しているのはあなただけだから」
すぐに帰るわ。
約束を刻むように、引き寄せた彼の唇に自身のそれを触れさせる。
明日離れるとわかっていても、幸せな時間だった。
数日後には、この時間が二人の手元に戻ってくると…そう、信じて疑わなかったのだ。
「もう…暇になったら連絡して、って言ってあるのに…」
そんなに大変な仕事だったかしら、と首を傾げる。
任務の合間、暇を貰っている間に触れる携帯には、セフィロスからの返信はない。
一番初めに、ニブルヘイムに着いた、と言う報告メールが届いたきりである。
彼の実力で苦労する任務と言うのが想像出来ない。
「…まぁ、あまり頻繁に連絡をくれる人じゃないし…仕方がない、か」
それでも、離れて任務をする時はいつもよりは連絡が来るのだが。
納得できないと言う自分自身を抑え、精神を統一させるように深呼吸をする。
「出発するそうです。お願いします」
「ええ、わかったわ」
一般兵に声をかけられ、ソルジャーの表情で歩き出す彼女。
幸せだった時間が、少しだけ霞んで見えた。
【 もう戻れない 昨日 】 セフィロス / Asure memory