013.絡みつく
洗ったばかりの包帯をくるくると巻いていく。
うんざりするような長さのそれを巻き終えても、まだ次が残っていた。
「偶には自分で巻こうとは思わないのかね」
やれやれ、と言った様子で包帯を巻き続ける彼女に、隣に座って同じ作業をしていた宗次郎が笑顔で答えた。
「そりゃ、志々雄さんですから」
「あぁ…ありえないよね。あの人が自分で巻くなんて」
そんな光景が見られた日には、天地がひっくり返っているかもしれない。
脳内に浮かんだ光景は、どこか涙か出そうなほどに平和すぎる光景だった。
正直、そんな志々雄は見たくはない。
「僕が全部やっておきますよ?」
「全部って…何十本も、一人でさせるわけにはいかないでしょ」
そういいつつ、一巻きを作り終えた端を留め、次へと取り掛かる。
「確かに包帯は清潔じゃないと意味がないし、あの人には大量の包帯が必要だけど…それにしても。この光景は圧倒されるわね」
洗われた包帯が山と積まれた光景は、病院くらいでしか見る事は出来ないだろう。
宗次郎は彼女の言葉に、暢気な声で「そうですねぇ」と微笑む。
「包帯を毎回新調していたとしたら、相当の出費になりそうですねぇ」
「…初めはね、そうだったのよ」
「そうでしたっけ?」
「君は覚えてないかもしれないけどね。毎回新しいのを開けてたのよ。
まぁ、根無し草だったし…仕方がないかとも思ってたんだけどね。ある程度アジトが定まりだした時点で、止めたのよ」
闇市の物を横流ししたりと、色々と工面してみたが、やはり塵も積もれば山になる。
他に使える金だと判断した時点で、いつかは止めようと思っていたのだ。
「三日三晩説得したわ」
「………そう言えば、お二人が四日鍛錬場から出てこなかった時がありましたね。出てきた時にはお互いにボロボロで」
由美さんが驚いてたなぁ。
まさに他人事のように話す宗次郎に、彼女は溜め息を吐き出した。
その時、くるくるとテンポ良く巻きつけていた包帯が、クン、と何かに引っ張られる。
「宗次郎。絡まってる」
「あ、ホントですね」
「…いや、ホントですね、じゃないの。解くのよ」
「うーん…複雑に絡まってますよ。二本くらい捨ててもいいんじゃないですか?」
「駄目よ。ただでさえ、洗って使える包帯は少ないんだから」
「姉さんは意外と細かいですよね」
「意外と、って部分が余計よ」
二人で絡まった包帯を解くべく、指先で試行錯誤しながらの会話は、緊張感の欠片もなく取り留めないものだった。
「いっそ、ここで切っちゃったらどうでしょう?」
「二の腕の長さもない包帯をどうしろって言うのよ、君」
「…足しくらいにはなるんじゃないでしょうか」
「ならないわよ。あの人の場合は」
「じゃあ、別の怪我人に使うとか」
「ここの怪我人って、大概は手当てが必要ないのよね」
「うーん…とりあえず、他のを先に終わらせませんか?」
「…同感ね」
【 絡みつく 包帯 】 瀬田 宗次郎 / るろうに剣心