011.小さな

きゅっと手を握られ、驚いたようにそちらを見る。
だが、そこに人の姿はなかった。
代わりに握られた感触があった手を見下ろせば、そこに繋がる小さな手。
手、腕、肩…全体的に小さなパーツを追っていけば、それが子供だと言う事がわかった。
見下ろす彼女の視線に気付いたのか、子供も同じように彼女に視線を向けた。
全てが小さいのに、その眼だけは存在感のある大きさだ。
「…君、どうしたの?」
子供には物騒な物を提げているだとか、そう言った事は関係ないのだろう。
きっと、近くにいたとりあえず触れられる人に近づいただけ。
出来るだけ優しい声を心がけ、子供に問いかける。
桜色のワンピースを着ている所を見ると、女の子なのだろう。

「ママ?」
「………うーん…違うと思うわ」

子供と言うものに慣れていない彼女は、いまいち距離感をつかめない。
どうやら迷子のようだが、泣き出す様子もなく、ただ彼女の手…いや、この場合は指を握っている、と言うべきか。
指先を切り落としたレザーグローブをはめている彼女の指を握る子供。
その手の平から伝わる熱が、徐々に彼女に落ち着きを取り戻させた。
ひとつ深呼吸をして、辺りを見回した。
こんな小さい子供が迷子になっているのだ。
親も心配して探しているだろうと考え、それらしい人影を探す。
そうすること、30秒。
それなりに人通りも多い道で、目立つ銀髪が見えた。

「セフィロス!」

少し声を大きくして、待ち人を呼ぶ。
彼女が声をかけるよりも先に気付いていたらしいセフィロスは、全く進行方向を変えることなく彼女の元へとやってきた。
そして、その手に繋がった子供を見て、無表情に彼女を見る。

「迷子みたい」

簡潔にそう説明した彼女に、セフィロスがじっと子供を見た。
流石に長身の男に無表情に見下ろされれば、子供とは言え恐怖を感じるようだ。
指を握り締める手に力が篭る。

「セフィロス」
「向こうに子供を捜している女親が居たな」

とりあえず射殺しそうなほど鋭い目を何とかさせようと彼の名を呼んだが、彼は別のことを考えていたらしい。
しかし、それは彼女が最も望む答えでもあった。

「じゃあ、この子のお母さんかな。行ってみようか」

最後は女の子に向けて声を発する。
わけもわからず、とりあえずこの怖いお兄ちゃんから逃げられると判断した子供は、コクリと頷いた。

「じゃあ、案内よろしく」
「ああ」





無事に女の子を母親の元へと返し、泣き出しそうな声の感謝をもらってから、二人は帰路へとついた。
ジッと自分の手の平を見つめている彼女に、セフィロスが問いかける。

「どうかしたのか?」
「…子供って、凄く小さいなって…。あの手に掴めるものなんて、本当にごくごく小さなものなのよ。
それなのに…とても大きな希望を掴んでいると思うの。これって、不思議よね」

あの手のぬくもりを思い出すように微笑む彼女。
恐らくは、セフィロスが理解するのは難しい感情だろうと思う。
けれど、彼はちゃんと自分の話を聞いてくれる。
そうわかっているから、彼女は理解してもらう為ではなく、知ってもらうために思いを口にする。

「…良かったな」

何が、とは言わないけれど、彼女が満足そうならばそれでいい。
薄く微笑んだ彼に、うん、と笑顔の花を開かせた。

【 小さな 】  セフィロス / Asure memory

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

09.01.29