004.終わらない

「ったく…あいつら、遅すぎ」

時計を見つめてぶつぶつと文句を言っている翼。
そんな彼の隣で、くすり、と笑う声が聞こえた。

「柾輝達が遅刻してくるのは、今に始まった事じゃないでしょ?」
「そりゃそうだけどね。高校生にもなって遅刻なんて、何を考えてるんだか」
「高校生になったって言っても、所詮は学校が変わるだけ。本人の自覚の問題よ」

高校生なのだと言う自覚を持っていれば自然と襟元を正すだろう。
持っていなければ、中学生の頃の延長のように過ごすだけだ。
だが…学校が変われば、中学の頃と同じように、と言うのは中々難しいもの。

「直樹は2年になって担任が煩い人に変わったんだって。
柾輝は、まだよくわからないみたい。六助は五助と同じ学校に入って…」
「………よく知ってるんだね」
「皆、結構マメにメールをくれるから。週一回くらい…かな」

進む道が分かれ、年月が経とうと…彼らは変わらず、彼らだった。
その事が、ただ嬉しいと思う。
変わっていくものもあれば、彼らのように変わらないものもある。
終わらない絆は、翼に言わせれば「腐れ縁」となるのだろうけれど。

「ふぅん…暇な奴ら。
受験や進級の瀬戸際だって聞いたから、忙しいかと思って連絡を避けてやったって言うのに」
「あれ、避けてあげてたの?意外なところで優しいね、翼」
「まぁ、無意味だったみたいだけどね」
「………まぁ、誰も大冒険はしてないし」

彼らはさほど危険な進路は選んでいない。
自分の許容範囲の中でまぁ高いか、と言った学校を選んでいる。
ある意味では賢い選択と言えよう。

「あ、メール」

持っていた携帯が震え、メールの着信を知らせてくる。
開いた画面には、何とも「らしい」言い訳が並んでいた。

「なんて?」
「慣れない路線だから逆向きに乗ったんだって。ほら、だから新規開拓なんてやめようって言ったのよ」
「………馬鹿じゃないの、って送って」
「嫌よ。自分で送りたかったら、送って」

そう言いながら忙しく動く指先は、翼が言うような内容を打ち込んでいるわけではないだろう。
溜め息をひとつ吐き出し、彼も自身の携帯を取り出した。
それを送るのは面倒だと思わないのか―――視界の端で彼の行動をとらえつつ、そう思う。

「どこで時間潰そうか?」
「あそこの喫茶店」
「んー…わかった。その隣の本屋に先に入ってもいい?」
「いいよ。一時間くらい待たされそうだし」
「…皆ー、早く来ないと翼のマシンガンが火を噴くわよー…」

4年目に突入した彼らの絆は、依然として強固な姿を残しているようだ。

【 終わらない 繋がり 】  椎名 翼 / 夢追いのガーネット

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09.01.20