001.冷やかな

奥州の冬は寒い。
肺を刺す冷たい空気を吸い込んだ彼女は、吐き出した息を手に吹きかけた。
一瞬だけほっと温まった手は、すぐに外気にさらされる。

寒くて、冷たくて、静かで。

けれど、彼女は奥州の冬が好きだった。
生まれ育った地は雪の少ない所で、子供の頃は降ってくる雪にすら感動を覚えたものだ。
庭先にこれでもかと積もるそれは、彼女にとっては圧倒されるような光景なのである。
毎朝少し早めに起きだして、寒い庭先に腰を下ろし、積もった雪に朝日が差し込むのを待つ。
きらり、と山の端から顔を覗かせたそれに、彼女の目が少しだけ細められた。

「風邪ひくぞ」

ふわりと背中に羽織がかけられた。
声の方を振り向けば、苦笑気味に笑う政宗が視界に映り込む。

「ありがとうございます」

羽織を確認すると、それは自分のものではなく、政宗のものだった。
ならば、彼は?と顔を上げれば、別の羽織を肩にかけた彼が「どうした?」と首を傾げる。
何でもないのだと示すように首を振ってから、顔を出してくる朝日の方を向いた。
まだ柔らかい陽の光が雪に反射して、息を飲むような絶景が生み出されている。

冷たい空気と、柔らかい朝日。

全てが、言葉に出来ないほど美しい。
その光景に見惚れている彼女を見て、政宗は小さく口角を持ち上げた。
彼女がこの地を愛してくれていると言う事が、嬉しいと思うのだ。
政宗は彼女を足の間に座らせるように、その背後に腰を下ろす。
彼女が疑問を口に出す前にその身体を背中から抱きしめ、顎を肩へと乗せた。

「…寒いな、流石に」

互いに熱を分け合うこの行為に躊躇いを覚える必要はない。
まるでそう言っているような彼の言葉に、彼女はくすくすと笑った。
そして、その身体の緊張を解いて彼の胸へと凭れかかる。

「そうですね」

軋んだ枝が雪の粉を降らせる。
ふわりと舞い降りてきたそれを手の平で受け止め、小さく微笑んだ。

【 冷やかな 】  伊達 政宗 / 廻れ、

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09.01.17