099.プレゼント
「はい」
「…………何ですか?これは」
「紅ちゃんにプレゼント。町中で一目惚れ。紅ちゃんに似合うと思ったんだよね」
「…随分と色気も下心もあるプレゼントですね」
シルクか何か、とても上等なパーティードレスを広げ、深く溜め息を吐き出す。
似合う似合わないの問題ではないと思ったが、一応心の中だけに留めておく。
どこがどう…と説明されて貴重な時間をつぶされるのが落ちだ。
とりあえず「ありがとうございます」とお礼を述べつつも、箪笥の肥やしになるだろうなと他人事のように考えていた。
そんな彼女の考えを読んだかのように、白蘭はにこりと笑う。
「明日のパーティーよろしくね」
「…明日?」
何かあっただろうか。
予定を確認してみると、良くしてもらっているファミリーのパーティーが記してあった。
しかし、その上には打ち消し線が引かれている。
二週間ほど前に白蘭本人から、気が乗らないから断っておいて、と言われていたからだ。
「パーティー、参加することになったんだよね。パートナー同伴が条件だから断ったんだけど、どうしてもって言うから」
「…引き受けるならば、初めから断らなければよろしかったのでは?」
「予定が空きそうになかったから断ったんだけどね。明日は何とかなりそうでしょ?」
「………いえ、元々このパーティー以外の予定はありませんが」
「うん。紅ちゃんの予定」
にっこり、と笑顔を浮かべる彼に、紅は何度か瞬きをする。
どういう意味だろうか。
そう悩む暇もなく、彼が口を開いて言葉を続けた。
「紅ちゃんがパートナーなら、行ってもいいと思ってたんだ。丁度良かったね」
これを聞いた瞬間に、何か予定を入れておけばよかったと思ったのは、紅だけの秘密である。
「ついでに夜明けのコーヒーでも飲もうか?」
「…それはボス命令ですか?」
「ううん。お誘い」
紅は手の中のドレスと、自分に向けられる笑顔に溜め息を吐き出す。
プレゼントのお返しは、随分と高くつきそうだ。
「…明後日の仕事はキャンセルになりそうですね」
「大丈夫。キャンセルになってるから」
「白蘭様…その根回しの良さを他の面で活用してください」
「で、どうする?」
「………私も気に入りましたし…返品しませんよ?」
「交渉成立だね」
「折角ですから、ヘアセットを頼みます。明日の午後からは有給をいただきますね」
「あぁ、行かなくていいよ。呼んであるから」
「―――――だからそれを…いえ、もう何も言いません」
白蘭 / 百花蜜