096.誕生日とクリスマス

「え?」

今初めて聞きました、と言った表情で声を零す彼女に、乱菊が首を傾げた。

「知らなかったの?」
「ええ…。誕生日の話なんて、しないから…」

まさか、日番谷の誕生日がクリスマスの5日前だとは思わなかった。

「もー…隊長ったら。肝心なことを話さないなんて」
「肝心?」
「そりゃ、肝心よ!誕生日って頼まなくてもプレゼントをもらえる日じゃないの!」
「…そっか…そんな風に考えたことなかった」
「…あんた…若者っぽくないわよ。誕生日をどんな風に考えてたわけ?」
「………生まれたことを感謝する日、かな」
「母親じゃないんだから。でもま…あんたらしいわね」
「それにしても…どうしよう。誕生日は、流石にプレゼントを考えようと思ってたのに…」
「そう思ってたなら、どうして聞かないのよ!」

今一行動がずれている彼女に、乱菊が深い溜め息を吐き出す。
そして、ぽんと彼女の肩を叩く。

「昼から休みにしてあげる。用意してきたらいいわ」
「それはよくないと思うんだけど…」
「明日の隊長の機嫌の方が大事なのよ」
「…まぁ、プレゼントをもらえないって言うのは、寂しいもんね」

仕方ないかぁ、と呟く彼女に、そうではない、と思う乱菊。
しかし、彼女にそれを理解させるには、優に2時間は必要だろう。
時間が勿体無いからと自分自身に言い聞かせ、乱菊は彼女の背を押した。

「ちょ…危ないって」
「いいから!隊長が帰ってくる前に出て行かないと―――」
「俺がどうかしたのか?」

後ろから聞こえた声に、ぎくりと肩を震わせたのは乱菊一人。
彼女の方は丁度良いとばかりに手を叩いた。

「お帰りなさい、隊長」
「あぁ。どうかしたのか?扉の前で」
「んー…何でも。昼から休みをいただくことになりましたから、よろしくお願いします」
「休み…?どっか体調でも悪いのか?」
「いえ、そうじゃなくて…あ、隊長」
「ん?」
「誕生日とクリスマス、一緒にさせてくださいね。今年は時間がないものですから」

ニコニコとそう言った彼女に日番谷が何かを答える前に、乱菊が彼女の手を引いて猛然と扉を走り出ていった。
扉の向こうから「何で言っちゃうの!」やら「サプライズがなくて面白くない」と言った乱菊の文句が聞こえてくる。
勢いよく閉じられた扉を見つめていた日番谷は、短く溜め息を吐き出した。

「ったく…この忙しい時に馬鹿やってんじゃねぇっての…」

そんなことを言いつつ、彼は帳簿の彼女の欄に午後早退と書き記した。

日番谷 冬獅郎 / Raison d'etre

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08.12.31