093.火遊び
「た、かすぎ…?」
普段ならば、視界いっぱいに見えているはずの天井。
それが、今は殆ど見えていない。
天井よりもより近い位置で自分を見下ろす高杉によって遮られているのだ。
「…退け。戯れが過ぎる」
何とか冷静さを掻き集め、じろりと高杉を睨みつける。
しかし、彼は何も答えず、ただ口角を持ち上げただけだ。
「俺は、酔ったお前に付き合うほど暇じゃない」
ふわりと鼻に届いてきた酒気に、この行動は酔っているからだを断定する。
元々、酒に飲まれるような男ではないが…酔いに身を任せる日もあるのだろう。
「飲まれると思うか?」
「…一夜の女が欲しければ、買いに行けばいい。俺に…女としての俺を求めるな」
ここで生きていくと決めた。
沢山の仲間が出来た。
すでに…女として生きることなど、諦めた。
それなのに、この男にそれを求められてしまったら―――自分は、どうすればいい?
「娼婦は面倒だ」
「金で解決する女のどこが面倒なんだ。お前がしようとしていることは…火遊びだぞ」
「火遊びかどうかは、てめぇが決めることじゃねぇな」
そう言って艶のある声と共に、すっと頬を撫でられる。
その目に見つめられることに耐えられなくなり、静かに顔を逸らした。
「…頼むから…。お前との関係を壊したくはない」
「…てめぇ次第だ」
目の前で笑う男は、自分に何を求めているのか。
愉快に細められる目は獣のような鋭さも垣間見せる。
月が見下ろす影が重なった。
高杉 晋助 / 朱の舞姫