091.カレンダー
「ん?」
壁にかけられたそれを見つめるセフィロス。
丁度良く、シャワー室から出てきたコウがその姿を発見した。
「壁の前で何してるの?」
濡れた髪を拭きながら、首を傾げてそう問いかける。
すると、彼はトン、とそれを指して彼女を振り向いた。
「前から掛けてあったか?」
「あぁ、カレンダー?昨日貰ってきたのよ」
目敏いわね、と笑う彼女。
セフィロスは、そんな彼女から視線を外し、じっとカレンダーを見つめる。
「カストルとポルックス…か?」
カレンダーは、上半分が写真、下半分が暦となっている、ごく一般的な形のものだ。
その上半分を見つめていた彼が、そう呟く。
すると、コウはへぇ、と驚いたような声を上げた。
セフィロスに名を呼ばれ、部屋の片隅で上下になって丸くなっていた二羽が首を上げる。
「よくわかったわね。この子達よ」
ちょこちょこと小さな足音を立てて近づいてきたチョコボ二羽を撫でつつ、そう答えた。
カレンダーに使われている写真は、二羽の仔チョコボが写っているものだ。
チョコボの個体を区別するのは中々難しいが、我が子同然の彼らがわからない筈がない。
「安くで写真を入れてくれるって言うから、どうせならと思って」
可愛いでしょ?と首を傾げる。
セフィロスはじっと壁掛けのカレンダーを見つめた。
自分は、何かを愛でると言う感情など知らないと思っていた。
そして、これからも知ることはないと…コウ以外に感情を動かされることはないと思っていた。
思っていたのだが、いや、しかし―――
「…悪くはないな」
呟くような小さな声でそう言って、足元に擦り寄ってきたポルックスの頭を撫でる。
声が届いたコウは、嬉しそうに…そして、微笑ましそうに、小さく笑みを浮かべた。
「作戦勝ち、ね」
彼には聞こえないように、カストルに語りかける。
理解しているのかはわからないけれど、クェ、と同意するような鳴き声をあげた。
セフィロス / Azure memory