083.現実的思考と楽天家
「今度こそ、どうよ!?」
「――――却下」
渡された紙に、悩んだ後の見える筆跡を見下ろし、暫くしてからそう答える。
はい、とそれを悠希に返せば、彼女はあからさまに溜め息を吐き出した。
「えぇー…もう何度目?」
「ごめん。数えてなかったわ」
「そっちに謝るの!?」
少々苛立っているらしい悠希は、渡された紙をぐしゃりと握りつぶした。
ぽいと放り投げた先を見れば、紙のくずが1、2、3…5つ。
「あー…もう駄目。何が駄目なのか全然わかんない」
「…右翼を攻められた時の、左翼の動きを考慮に入れていないからよ。
全体を見通す力がないと、戦況が変わった時に対応しきれないでしょう」
視線を向けずにそう答え、手元の兵法を記したそれを見下ろす紅。
「そんなの、状況によりけり!気合で結構どうとでもなるものよ!」
「あのね…。悠希も、元親さんと変わらないわ。
楽観主義な元親さんを諌めるために、勉強しに来たんじゃなかったの?」
気合って…部活じゃあるまいし。
思わず苦笑を零すと、紅は紙を持った手を膝に置いた。
「それはそうだけど…そもそも、頭脳プレイは私の性に合わん」
「じゃあ、やめる?」
「それは嫌!
元親に「紅のところでしっかり勉強してくる!」って大きな口叩いて出てきたんだから」
変なところで意地っ張りだ、と心中で笑う。
けれど、そんな一生懸命な親友が嫌いではない。
協力しよう、と言う気分にさせる、彼女ならではの力を感じた。
「兵法なんて、学ばなくていいと思うわよ」
「紅?」
「悠希が戦に出るなんて、ありえないでしょう?」
「そりゃ…弱いから、無理だけど。作戦を立てる時に役に立つかもしれないじゃない」
「その努力は認めるけど。一朝一夕にどうなるものでもないし」
すぐには無理よ、と告げれば、悠希は口を尖らせてその場に座り込んだ。
「悠希は、別の形で支えてあげられる。それでいいじゃない」
「…確かに…無理に頑張ったって、無駄かなぁ」
そろそろ悩むのにも限界を感じていたのだろう。
予想外に、彼女はあっさりと頷いた。
「紅、人間大砲ってどうかしら。移動時間の短縮にもなるし、奇襲にもなるよね!」
「…それ、実際にやったらその人危険だから。ゲームのやりすぎよ」
親友 / 廻れ、