066.赤の色
頬に当たる風を感じ、そっと目を伏せた。
細くなった視界の中で、赤が帯になって揺れる。
あの日から一度も解いたことのない赤いリボン。
鮮やかなそれは、10年以上経っているというのに、色あせることもなくそこにある。
まるで、彼の赤い髪が乗り移っているようだ。
きっと、あの赤髪も、海原の上で風に揺れているのだろう。
「早く会いたいなー…」
船の縁に腰をかけ、危なげなく絶妙なバランスを取りながらそう呟く。
ぶらぶらと足を揺らす様は、まるで子供のようだった。
前に揺れていた赤い髪を、つい、と前足で触る。
肉球が触れると同時に足を引っ込めるのだけれど、また触れたいという欲求が首を擡げて。
柔らかい猫パンチを繰り返していると、足場にしていた肩が小刻みに揺れだした。
「肉球がくすぐったいな」
赤い髪の持ち主であるシャンクスが、笑いながら肩から抱き上げる。
大きな腕に抱かれることに対しての不安はない。
他の人ならば、落とされたら…と思うので緊張してしまうのだけれど。
「そんなに気になるか?」
「にゃ」
「その“にゃ”は肯定だな」
片腕に乗せられ、もう片方の手で頭を撫でられる。
押しつぶさない強さのそれが心地良く、喉を鳴らして目を細めた。
また、笑い声が聞こえる。
「お前のこのリボンも、俺の髪とお揃いだ。俺の髪だと思って大事にしろよ?」
「もちろん!」
大事にしないはずがない。
耳をぴんと立ててそう答えれば、彼は嬉しそうに目を細めた。
「よし。じゃあ…いつか海の上で再会した時にリボンをなくしてたら…くすぐりの刑だな」
覚悟しろよ、と言って鼻の頭を指先で押してくるシャンクス。
望むところだと答える代わりに、かぷりとその指を甘噛みした。
シャンクス / Black Cat