058.飽きないの?
ぼんやりと庭先を見つめる悠希。
縁側に座りながら、はぁー、と息を吐く。
決して溜め息ではなく、どちらかと言うと、感心しているそれだ。
「相変わらず恐ろしい朝練量ねぇ…」
呟いた彼女の視線の先に、紅の姿があった。
彼女は動きやすい袴と胴衣に身を包み、木刀の素振りに勤しんでいる。
紅が素振りをはじめてから、すでに1時間が経過しているのだ。
その間、延々と木刀を振るう彼女。
そんな彼女に付き合って縁側に座り続けている悠希も悠希だと思う。
ふぅ、と漸く木刀を置いた紅が、縁側へと近づいてきた。
歩いてくる彼女に、悠希が手拭いを渡す。
「ありがとう」
「ねぇ、紅?」
「うん?」
手拭いで汗を拭ってからから、用意していた水を飲む。
そんな紅に向かって声をかける悠希。
紅が視線を向けると、彼女は真剣な表情で続けた。
「…飽きないの?」
「………飽きないけど…悠希には無理かもしれないわね」
「うん。5分で飽きる自信があるわ」
迷いなく答える悠希に、紅が笑いを零す。
確かに、彼女だったなら5分ともたないかもしれないな、と思う。
くすくすと笑う紅に、悠希が頬を膨らませた。
「そんなに笑わなくたっていいじゃない!」
「ご、ごめん…。何か、壺に…っ」
何とかそう答えて腰を折り始める彼女。
もう、と怒る悠希だが、自分が長続きするとは思わない。
「失礼するわ、まったく。元親も同じことを言うのよ!」
「あはははは!」
いよいよ笑いを堪え切れなくなった紅が、地面に膝をついた。
朝から庭に響く楽しげなやり取りに、米沢城の面々が小さく笑みを浮かべたのを知るのは、本人たちだけである。
親友 / 廻れ、