055.やっと。
肉を裂く独特の感触。
巨大なモンスターが飛散していくのを見て、ティルは肩で息を整える。
ずっと、重いだけだった刀が…今日、はじめて自分のものになった気がする。
「これで、やっと…」
まずは一歩目だとわかっている。
けれど、知識ばかりの頭でっかちだった自分は、漸く力を手に入れた。
知識を、生かせるようになった。
それは、ティルにとっては大いなる一歩だ。
それこそ、血反吐を吐くような辛い思いをしてきた。
実際に、実験の所為で血を吐いた事だってある。
それでも、その痛みに耐えてきたのは…彼には目的があったからだ。
「まだまだだけど、まず一歩」
確かな手応えを感じ、ティルはギュッと自身の拳を握る。
一歩だけ、伝説に近づいた。
ベヒーモスを倒したといっても、今回が初めてだ。
まだまだ、最高と詠われた彼らには、遠く及ばない。
けれど…少なくとも、ソルジャーレベルには達したはず。
「俺…頑張るから」
胸元に下げた青いペンダントを握り、それに額を寄せる。
誓いにも似たこの行動は、最早習慣となっていた。
精神統一のひと時を終えると、ティルは入り口近くに設置されているパネルを操作する。
設定レベルを3つ上げた。
「こんな所で、満足してられない。俺は―――伝説を、倒すんだ」
決意を新たに、少年には長すぎるであろう刀を構える。
そして、ダン、と強く踏み、牙を剥いたモンスターへと駆け出した。
ティル / Crimson memory