050.半分こ。
「…何をそんな真剣な顔で睨んでんだ?」
部屋の真ん中で座り込んだまま険しい表情をしている彼女に、政宗が声をかける。
彼女は手元から視線を逸らすことなく答えた。
「随分と紐が傷んでいるようでしたから、交換していたんですけれど…」
「…よく気付いてたな」
「毎日見ているのですから、当然です」
「で、それがどうした?」
彼女の前には政宗の六爪がある。
戦時に命を預ける大切な相方だが、彼女にはそれに触れる許可を与えていた。
とは言え、滅多なことがない限りは彼女が自らそれに触れることはない。
彼女は刀が武士にとって大切なものだと知っている。
一見すると彼女は刀を睨みつけているように見えるけれど、どうやら違っているようだ。
その視線は、刀を腰に佩くための紐へと固定されていた。
「…長いんです」
「………確かに、長いな」
六本の刀を通さなければならないので、普通よりは長い紐が必要だろうと、規定サイズ外の長さにしてもらった。
そこまではいいのだが…長い。
一目見てもわかるほどに、余り過ぎるのである。
「余りくらいで悩んでんのか?」
「政宗様の六爪を支える大切な紐ですから、特注で作っていただいたんです。少し長めにとお願いしましたけれど、これはいくらなんでも…。それなりに値が張っただけに困りましたね」
必要な長さの倍近くあるそれは、最早余ったと言うレベルの話ではない。
重要なものだとわかっているから、金がかかることに文句はない。
だが、この余りをどうするかは問題だった。
依然として紐を見つめ続ける彼女に、政宗は刀の一つを鞘から抜く。
そして、それで彼女の手元の紐を真ん中辺りで二つに斬り裂いてしまった。
「政宗様!?」
「ほらよ、半分はお前が使え。端の始末は任せたぞ」
「…いいのですか?」
政宗様に作らせたものの半分を貰ってもいいのだろうか。
戸惑う彼女に、彼は溜め息を吐き出した。
「変な所で律儀な奴だな。余って困るなら好きに使えばいいだろ。上等な品なら、尚更だ」
「…わかりました。ありがたく頂戴します」
そう言ってから、彼女は部屋の隅に置かれていた自分の刀を運んでくる。
丁寧に結わえていくその表情はどこか嬉しそうだ。
その理由を問うと、彼女ははにかむように微笑む。
「政宗様と同じものを持っていると思うと…嬉しくて」
この程度の事で喜ぶ彼女を、単純だとは思わなかった。
ただ純粋に、嬉しそうな彼女の表情を見て、心が温まるのを感じる。
政宗は何も言わず、穏やかな笑みを浮かべて彼女の髪を撫でた。
伊達 政宗 / 廻れ、