044.明日はどうだろ。

「随分と警戒するね。同じ仲間同士、仲良くしようじゃないか」
「…警戒してないわ」
「嘘だね」
「………じゃあ、正直に答えてあげる。明日は敵かもしれないあなたとは仲良く出来ない」
「酷いなぁ。まるで、僕が裏切るみたいだ」

薄ら寒い笑顔でそう言われて、誰がそんなことはないな、と思えるだろう。
しかしながら、その通りだろうが!と肯定するのも危険な香りを感じる。
結果として、残された道は目を逸らして沈黙することだけ。
だが、目の前の道化師は、そんな彼女の反応すら楽しげに見守るのだ。

「じゃあ、約束しようか?」
「あなたの約束…当てになるの?」
「★」

それは肯定か否定か。
じとりとした目を向けると、彼は愉快そうに笑う。

「君の敵にはならないよ。成長するまでが楽しみだ」
「子供じゃあるまいし…これ以上成長しないわよ。後は老いるだけ」
「身体の事じゃないよ」
「でしょうね」

わかって言ってるの。
つんとそう答えると、堪えるような笑い声が聞こえてくる。

「明日の心配をしなくてもいい方法を教えようか?」
「…何だか、嫌な予感がするんだけど」
「君は、僕の事を随分と誤解しているようだね。
僕は、釣った魚は美味しくなるまで大事に育てる性質なんだ」

美味しく。
その時点で、彼女の態度は誤解でも何でもなく、寧ろ普通の反応だ。
口元を引きつらせた彼女に、彼は続ける。

「美しいものを愛でる心もある」
「…あ、そ」
「僕のモノになりなよ。絶対に敵にならないし、大事に育ててあげるよ」

昼食でも食べに行こうか、と言った軽い口調で飛び出した言葉。
彼女は、それを理解するまでの数秒の時間を要した。
そして、ザザッと音がしそうなほどに勢いよく退く。
精神的なものではなく、現実的な距離として、3メートルは離れた。

「敵で十分です」
「それもまたイイね。そうなったら、本気の殺し合いをしようか」

こちらがゾクリとするような、恍惚とした笑みを見せるヒソカ。
いよいよ身の危険を感じ始めた彼女は、いつでもこの場を離れられるよう心の準備をする。

「うん。とても楽しそうだ…どうだい、明日―――」

三十六計逃げるに如かず。
脱兎の如く逃げ出した彼女は、最後まで話を聞くことなくその場から逃げ出した。
他の仲間の元へと駆けて行く気配を感じつつ、ヒソカはククッと笑う。

「どちらに転ぶかは君次第…だね」

彼女がどの未来を歩いてくれるのか。
今はそれを想像して楽しんでおこう。
いずれ、彼女がその道を歩いてくれた時、思う存分楽しめるように。

ヒソカ / Ice doll

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08.10.21